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DVD

国内盤、海外盤含め、メルヴィル作品で現在入手可能なDVD情報。
当方、DVDの規格等にはあまり詳しくないので、あくまでも参考までに。
画質等の感想についてはあくまで私見に過ぎません。
↓の表の作品名をクリックすれば該当する作品のDVD欄へと飛びます。
Amazonで購入できるものはパッケージ画像をクリックすればリンクに飛びます。


1946 『ある道化師の二十四時間』(未紹介) 1962 『いぬ』
1947 『海の沈黙』 1962 『フェルショー家の長男』
1949 『恐るべき子供たち』 1966 『ギャング』
1953 『この手紙を読むときは』 1967 『サムライ』
1955 『賭博師ボブ』 1969 『影の軍隊』
1958 『マンハッタンの二人の男』 1970 『仁義』
1961 『モラン神父』 1972 『リスボン特急』

『海の沈黙』
海の沈黙 紀伊国屋書店
2010年11月27日に紀伊国屋書店より発売された『海の沈黙』初の国内盤DVD(HDニューマスター版)。
2010年に岩波ホールを始め全国で劇場公開されたデジタルリマスター版と同じマスターを使用しているとのことで、“HDニューマスター”を謳った画質はとても60年以上前の作品とは思えないほど。
さすがは紀伊国屋レーベルというべきで、本当に驚くほど素晴らしい画質のDVDです。
収録時間も86分と、スピードアップされたPAL盤でもありません。
このDVDでこの作品を初めてご覧になる方でも作品の素晴らしさを十分に堪能できるのではないでしょうか。

特典は、全8ページのリーフレット、本国公開時の予告編(3分)のみ。
これは、5040円という高めの価格設定からいえばちょっと寂しい気がします。

リーフレットの内容は井上真希さん(ルイ・ノゲイラ著『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』の翻訳者)の解説(4ページ)と、メルヴィル監督、アンリ・ドカ、ハワード・ヴェルノン、ニコル・ステファーヌの紹介。

この井上真希さんの解説が、ストーリー、演出、演技といった一般的な映画の説明ではなく、ひたすらメルヴィル監督の精神背景に迫ったユニークなもの。
しかし、メルヴィル作品を貫くこの精神背景こそが『海の沈黙』を始めとする作品群を理解する上で実は最も重要なカギであり、その意味でも、これこそが本来の意味での“映画の理解”を深めるための解説と言えるのではないかと思われます。
海の沈黙 英Masters of Cinema
2007年、突如発売された英盤DVD。
PAL盤なので、パソコンでは観ることができます。(英語字幕付き)
世界的にも初のDVD化ですし(訂正:2005年頃、仏RENE CHATEAU盤DVDが存在したという情報を得ました。現在廃盤のようです)、VHSビデオも存在はしたものの、ほとんど出回ったとは言いがたい作品なので、こうしてソフトが発売されたということ自体奇跡的と言えるかもしれません。
日本ではWOWOWで一度放送があったものの、もちろんソフト化はされていません。
日本盤DVDの発売が望み薄の現在、この伝説の名作を英語字幕で観ることができる当DVDの価値は計り知れないと言えましょう。(追記:2010年11月に日本盤DVDが発売になりました)
ちなみにこの作品、2008年、日本で劇場初公開され、観る者に多大なる感銘を与えたことは記憶に新しいところ。(追記:2010年には岩波ホールを始め全国でデジタル・リマスター版が公開されました。)

気になる画質ですが、特に前半でところどころスクラッチが目に付くものの、作品の年代を考慮すれば復刻状態は極めて良好と思われます。
パッケージ、ブックレットを含めた商品そのもののクオリティも高いので、初めてこの作品を観る方にも薦められます。(こちらでわずかながら作品の雰囲気を味わえます)
本編の収録時間は84分で、PAL盤特有のスピードアップによって、実際の時間よりも短くなっています。

特典映像はジネット・ヴァンサンドーの最新インタビューで(21分。英語のため字幕なし。なぜかモノクロ)、20分以上に渡って、休む間もなく、怒涛のように作品を語っています。
50ページ以上にわたるブックレットも凄い。
内容は、ジネット・ヴァンサンドー著「Jean-Pierre Melville:American In Paris」の『海の沈黙』に関する部分、そして、ルイ・ノゲイラ著「サムライ」の『海の沈黙』に関する部分です。(当然どちらも英語)
『恐るべき子供たち』
恐るべき子供たち IVC
現在発売されている唯一の国内盤DVD。
私は所有していないので画質の程度は分かりませんが、メーカーの実績からいっても(笑)、できる限り東北新社盤を探すことをオススメしたいところです。
恐るべき子供たち 東北新社
本編100分。
以前東北新社から発売されていた国内盤で、残念ながら現在廃盤です。
急いで買っておいて良かった(笑)。
クライテリオン盤を観た後では画質に不満があるものの、現在出回っているIV●盤よりも画質が良いのは確実。
Amazonではまれに安い中古が出ることもあります。
中古CD店などではお店によっては置いてある可能性もあるので、欲しい方は探しましょう!
イントロダクション、一部のキャスト、スタッフの紹介付き。
恐るべき子供たち 米クライテリオン
米クライテリオンから発売されている輸入盤。
リージョン1なので、通常の国内DVDプレーヤーやパソコンでは観られないのが残念ですが、さすがはクライテリオンだけあって、画質は素晴らしいです。
気になるのは特典映像ですが、1枚組ということもあって、一つ一つは長い時間ではないものの、なかなか密度の濃い内容です。
特典映像の内容は以下の通り。

イギリスの文学・映画評論家であるギルバート・アデアによるコメンタリー
●『映画について』(映画『恐るべき子供たち』についてのドキュメンタリー。14分。出演:キャロル・ヴェズヴェレール、ジェラール役のジャック・ベルナール、助監督のクロード・ピノトー)
●『ニコル・ステファーヌのインタビュー』(2003年にフランスのテレビ番組に収録されたもの。12分。)
●『ジャン・コクトーをめぐって』(16分。ジャン・コクトー美術館の中をDominique Paini氏とJean Narboni氏が巡りながらの対談)
●スチール・ギャラリー
●予告編

中でも『映画について』と『ジャン・コクトーをめぐって』は、映画『恐るべき子供たち』が監督のメルヴィル、原作者のコクトーどちらの作品と言えるかをめぐって、大変興味深い話が聞けます。
もちろん、撮影から50年以上を経た後のニコル・ステファーヌのインタビューも、出演者ならではの撮影秘話が聞ける貴重なもの。
ブックレットの充実ぶりも特筆ものです。
『この手紙を読むときは』
この手紙を読むときは 仏Gaumont 
フランス本国で発売されたこの作品初のDVD。
リージョンはオールとパッケージに表示されておりますが、当然のようにPAL盤なので日本国内のDVDプレーヤーで再生することはできません。
国内のパソコンでは再生できます。

フランスGaumontからはこれと同じパッケージのDVDシリーズが大量に発売されたようなのですが、どうやらこのシリーズ独自の特徴として聴覚障害者のため字幕がついているようです。
したがって、このDVDにもフランス語字幕が付いています。(画面から消すことは可能)
聞き取るだけよりは分かりやすいので、フランス語に堪能な方やフランス語を勉強中の方は便利かもしれません。
ただ、私自身は字幕を表示して鑑賞したにもかかわらず、内容はほとんどわかりませんでした…。
せめて英語字幕が付いていれば…。

本編の収録時間は101分。
ルイ・ノゲイラ著『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』他では104分という記載がされておりますので、PAL特有のスピードアップによって収録時間が短くなっているものと推測されます。
気になる画質ですが、ところどころノイズが目につくものの、まずは良好といってよいのではないでしょうか。
個人的にこれまで観ていた海外版VHSとは全く比較にならないほど画質はしっかりしています。
音声含め、作品を鑑賞するにはこれといった大きな問題はありません。

一方で、特典映像の類は一切収録されていません。
また、スリムケースなので、パッケージは安っぽいといえば安っぽいですが、その分価格設定も控えめとなっています。
『賭博師ボブ』
賭博師ボブ ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパン
ようやく発売された待望の国内盤DVD。
やはりこれもユニバーサルから発売されたわけですが、とりあえず1500円という廉価盤での発売(2009年5月現在)を喜びたいと思います。
これまで必ずしも高くなかったこの作品の知名度が、このDVDの発売によって大いに高まることを期待したいですね。
実際、後期の作品に劣らぬ魅力のある作品ですし。
作品の内容については作品紹介のページに譲るといたしまして、ここではDVDとしての特徴をいくつか挙げてみたいと思います。

まず、このDVDもPAL/NTSC変換されたマスターが使用されたPAL盤であるようです。
PAL盤と思われる理由は次の通り。

●正しい尺での収録と思われる米Criterion盤の収録時間が102分であるのに対して、このDVDの本編の収録時間は98分。
●他のメルヴィル作品も含め、近年ユニバーサルから発売されているフランス映画のDVDは、ほとんど(すべて?)PAL/NTSC変換されたマスターのものであるとの噂。(英国盤マスター使用とのこと)
●実際に本編を観た印象として、セリフやナレーション、音楽のピッチが明らかに高く、また動きも速く感じられる。

三つ目の特徴は、極めて個人的な感覚によるものですが、これまでCriterion盤、国内VHSビデオでこの作品をさんざん繰り返し観ておりますので、それなりの確信があります。
映画冒頭のメルヴィルのナレーションなど、聴き慣れた声より高く感じられ、メルヴィルの声と判らないくらいでしたから。

気になる画質に関しては、やはり他のユニバーサル発売のメルヴィル作品同様、極めて良好です。
Criterion盤に比べますと、少々乾いた(?)質感の感じられるモノクロ画面ですが、決して劣る印象はありません。
こと画質に関しては、安心して楽しめるDVDですし、この手のものとしてはパッケージのデザインも良く、作品の雰囲気をよく伝えていると思います。(ユニバーサルの廉価盤DVDの帯についている○×度の指数?は相変わらず意味不明ですが)

問題点としては、やはり字幕です。

まず、全体的に直訳調で、こなれた感じがありません。
このような粋な作品は、少々意訳っぽくても雰囲気重視の字幕が求められると思うのですが…。
それに、ところどころで字幕の表記のテンポが速く、表示されている字幕を読みきらないうちに次の字幕に変わってしまうようなところが何箇所かありました。
もしかしたら、そう感じたのは私だけかもしれませんが、他の映画のDVDではほとんど経験しないことなので、気になったことは事実です。
そのことと関係あるのかどうか分かりませんが、字幕の書体(フォント)が少々安っぽく、どことなく読みにくいのも気になりました。

また、同じくユニバーサル盤の『いぬ』でもそうでしたが、登場人物の名前の表記が、場面場面で違っているのは困りものです。
例 ギー・ドコンブル演じる警視の役柄名 ルドルー=レドリュ
また、ルドリュ警視が警察署長と表示されていたのもビックリでした。
『リスボン特急』のアラン・ドロンの役柄も警察署長になっていて驚きましたが…。

特典はフォト・ギャラリーのみ。
枚数は想像したよりも多めでした。
賭博師ボブ 米クライテリオン
米クライテリオンから発売されている輸入盤。
リージョンALLなので、国内のDVDプレーヤーでも安心して観られます。
この作品はこれまで国内VHSのレンタルで視聴可能でしたが、さすがクライテリオンと言うべきか、画質がそれらとは雲泥の差の素晴らしさです。
本編102分。
特典画像はメルヴィルのラジオインタビュー(音声のみ)、ポロ役のダニエル・コーシーの最近のインタビュー、予告編。
言うまでもなくメルヴィルの重要作であり、国内DVD化を切に望みたいところです。(2009年5月に国内盤が発売されました)
『マンハッタンの二人の男』
マンハッタンの二人の男 紀伊国屋書店
2005年、奇跡の国内DVD化!
パッケージ、画質ともまずは満足すべき仕上がり。
価格が高いのが不満といえば不満ですが、ファンとしてはこの世に出ただけで嬉しい。
海外でも、この作品のDVDは出ておりませんので(2007年10月時点)、この国内盤DVDは大変貴重です。
実際どれだけ売れているのかどうかちょっと心配ですが(苦笑)、廃盤になる前に是非手に入れましょう。
本編84分。
特製リーフレット(20p)付きで、杉原賢彦氏の解説が読み応えあり。
特典映像はオリジナル劇場予告編。
最近フィルム・ノワールに力を入れている(?)紀伊国屋さん、次はぜひ『ギャング』か『サムライ』を!

(追記 2010年、エンタメ・プライスとして廉価で再発されました。また、2010年10月にフランスでDVDが発売になりました。)
『モラン神父』
モラン神父  IVC 
2011年5月27日に発売されたこの作品初の国内盤DVD。 
メーカーはこれまで『恐るべき子供たち』『いぬ』『仁義』といったメルヴィル作品の国内盤DVDを発売してきたIVC。

発売前のメーカーの商品ページでは本編収録時間が128分と表示されていましたが、実際は112分。
その後に発売されたクライテリオン盤ブルーレイ(DVDも)の本編収録時間が117分でしたので、今回両者を同時に再生して比較してみましたが、IVC盤は明らかにピッチが高めでした。
また、IVC盤と英BFI盤(PAL盤)も同時に再生してみたところ、ピッチは全く同じでした。
よって、今回のIVC盤DVDはPAL変換されたマスターが使われているのは間違いなく、PAL盤特有の早回しによって117分→112分と収録時間が短くなっているものと考えられます。

今回の国内盤は、リマスターとかHDマスターとかの記載が特になかったために、映像のクオリティに不安がありましたが、観た印象としては特別良くもないが悪くもないといった印象です。
英BFI盤DVDとの比較でいえば、ほとんど両者に変わりはないものの、厳密にはIVC盤の方がわずかながら細部の映像がボヤけている印象があり、その意味で若干劣っているという印象は否めません。
ただ、それほど気になるレベルではありませんので、初めてこの作品を観る方にはほとんど気にならないのではないかと思われます。

字幕もわかりやすく、まずは満足のいくレベルに達していると思います。
モラン神父とバルニーの対話が大きな比重を占めるこの作品をこれまで英語字幕で四苦八苦して観ていたわけですが、それだけに日本語字幕でこの作品を観られるという喜びは例えようがありません。(日本語字幕は画面から消すことも可能)

特典映像はありませんが、タイトルメニューからスタッフ・キャストを選択すればメルヴィル、アンリ・ドカ、マルシャル・ソラル、ジョルジュ・ド・ボールガール、カルロ・ポンティ、ジャン=ポール・ベルモンド、エマニェル・リヴァの解説、フィルモグラフィーと、杉原賢彦氏による作品解説を読むことができます。

あと、当DVDのメーカーの商品ページに次のような気になる指摘があります。

【※1時間20分40秒〜1時間21分54秒間に、オリジナルマスターに起因する帯状の映像処理の痕跡がございます。予めご了承くださいますようお願い申し上げます。】

もしや欠陥が?と少々心配になりましたので、まずは英BFI盤DVDとフランス盤DVDを調べてみました。

どちらのDVDでもこの時間帯はバルニーが連合国軍兵士に誘惑されるシーンとなっています。
ここでバルニーと兵士との間で英語によるやり取りがあるのですが、その会話の字幕部分(画面中央の下部)に“帯状の映像処理の痕跡”が見られます。
おそらくはフランス本国での公開時に、英語の会話に対するフランス語字幕が画面に印刷された痕跡なのではないでしょうか。
実際、フランス盤DVDでは全編でこの部分だけにフランス語字幕が表示されます。

一方で、クライテリオン盤ブルーレイにはこの映像処理の痕跡はありません。
クライテリオン盤ブルーレイの特典映像には他の各DVDには一切収録されていない削除シーンもわずかながら収録されていますから、あるいは使用しているマスターが全く異なるということも十分に考えられます。
モラン神父 bfi
bfi(British Film Institude)というイギリスのメーカーから発売されている英語字幕付きのPAL盤。
PAL盤ということで、通常の国内DVDプレーヤーでは観られませんが、パソコンでは観られます。

日本のメルヴィル・ファン、またはベルモンド・ファンにとって、長らく“幻の作品”である『モラン神父』ですが、劇場公開、日本盤DVD発売がほとんど不可能と思われる現在の状況の中で、英語字幕とはいえ、こうしてDVDで観ることができるのは慶事と言わなくてはなりません。
作品の内容についてはまた改めてFILMOGRAPHYのページで紹介したいと思っていますが、このbfi盤は、以前紹介した『いぬ』同様、DVDの画質も大変美しく、映画の見事な出来栄えを実感できる素晴らしいものです。
この作品のDVDはフランス盤も出ておりますが、一般的には英語字幕付きのこのbfi盤が入手もしやすく、一番オススメできるでしょう。
実際、宗教を取り上げた作品だけに、難解な専門用語がチョコチョコ目に付きますので、私も電子辞書と格闘しながらの鑑賞でしたが(笑)、英語字幕のお蔭でそれなりの理解ができ、なんとか観ることができました。
本編は115分と、PAL盤特有のスピードアップによって、実際の時間よりも短くなっています。

特典映像は、予告編、bfi盤の『いぬ』同様、助監督を務めたフォルカー・シュレンドルフの最新インタビュー、メルヴィルのバイオグラフィー、ジネット・ヴァンサンドーによる英語によるintroductionと音声解説です。
『いぬ』
いぬ IVC
いろいろな評判のあるメーカーですが(笑)、このパッケージは嫌いではありません。
廃盤にならずにずっと発売され続けているので、この作品の認知度に果たした役割は計り知れないと言えるでしょう。
画質も例によって物足りないのですが、この作品の良質なマスターのDVDを観たことがないので、なんとなく満足しちゃってます(笑)。
本編109分。
スタッフ、キャストの紹介付き。
いぬ ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパン
新たにユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンから発売された『いぬ』の国内盤DVD。
以前IVCから発売されていた国内盤は廃盤となったようで(入手はまだ比較的容易です)、その意味でも価値があります。
1500円という廉価での発売も嬉しいところ。(2008年12月現在)

発売が予告された段階では、パッケージのタイトルが米公開時の『THE FINGER MAN』となっており興を損ねましたが、発売されたものを見ると、いつの間にか、ちゃんと原題の『LE DOULOS』となっていました。
こういったことを手を抜かずにやっていることは、個人的には評価したい点ですね。
ただ、パッケージ裏の作品解説は「?」の部分がありますが…。

この盤は他のユニバーサル盤同様、PAL盤と思われます。
通常、この映画の尺は109分ですが、この盤の尺はPAL盤特有のスピードアップによって、104分となっています。
したがって、ピッチも若干高くなっています。
IVC盤は通常の尺による収録ですので、これはユニバーサル盤の劣る点と言えましょう。

しかし、IVC盤に比べて、当盤の魅力はなんといってもその優れた画質です。
というか、もともとこの画質が普通なのであって、IVC盤が酷かったということなのですが…。
当DVDは当然のことながら、オリジナルのビスタサイズ【1・66:1】で収録されており、IVC盤のように画面の端が切れているというようなことはありません。
この盤は音質も良く、冒頭の足音もきちんと収録されています。
特典は写真ギャラリーのみ。
このギャラリーは写真を横型の卵型にくり抜いたもので、内容も含め、あまり良いものとは思えません。

そして、ユニバーサル盤ということで、やはり字幕が気になるところですが、部分的に「?」の点があるにせよ、全篇を観た印象としましては、ストーリーも追いやすく、悪くない出来と言えるのではないでしょうか。
一番困るのは以下のように登場人物の名前がところどころで一致しないことです。
殺し屋の名前 カーン=ケーン 
モーリスの妻の名前 アルレッテ=アルレット

この作品のような複雑なプロットの作品の場合、人名の混乱は作品理解上の致命傷となりかねませんので、こういうことはちょっと困りますね。
ちなみに、字幕は日本語のみ。

それと、これから『いぬ』の国内盤DVDを購入する場合、IVC盤にするか、このユニバーサル盤にするか迷う方もいらっしゃると思いますが、私は断然このユニバーサル盤をオススメしたいと思います。
その理由は、まずなんといっても画質が格段に良く、そして、字幕の内容理解が比較的容易だからです。
IVC盤の利点は、通常の尺によって正常なピッチで収録されていることですが、この点はほとんどの人には気にならないことだと思われます。(あくまでも相対的に、ですが)
また、すでにIVC盤を所有している人にも、是非このユニバーサル盤をご覧になることをオススメしたいと思います。
これまで観ていたDVDがなんだったのか?というくらい画質が違いますので…。
いぬ 米クライテリオン
2007年に米Criterionから発売された輸入盤(英語字幕付き)。
この作品は国内盤DVDは長らく存在したものの、画質が良くないのが致命的な欠点でした。
そのため、以前紹介したbfi盤など英語字幕付き輸入盤の存在は大きかったわけですが、2007年にユニバーサルから画質の優れた新たな国内盤が登場したために、そういった輸入盤の存在意義が薄れたことは確かです。
しかし、このCriterion盤は品質の高さ、豊富な特典映像等によって、独自の魅力があり、ファンには決して無視できないDVDです。
このDVDは、映画本来の尺(109分)での収録となっていますので、PAL盤であるユニバーサル盤やbfi盤のようにスピードアップのためピッチが高いということもありません。
画質も、さすがはクライテリオンだけあって素晴らしい。
ただ、リージョン1なので、通常の国内DVDプレーヤーやパソコンでは観られません。
画面比率は【1.66:1】

気になる特典映像の内容は以下の通り。

●『PAGE CINEMA』(メルヴィルとベルモンドのインタビュー映像、モノクロ、4分、63年2月1日放送)
●『CINEPANORAMA』(セルジュ・レジアニのインタビュー、モノクロ、7分、63年6月15日放送)
●『LA JOIE DE VIVRE』(公開テレビ番組におけるメルヴィル、レジアニの対談、モノクロ、3分)
●ベルトラン・タヴェルニエの最新インタビュー(15分、カラー、英語のため字幕なし)
●フォルカー・シュレンドルフのインタビュー(13分、カラー、英語のため字幕なし、bfi盤と全く同じもの)
●ジネット・ヴァンサンドーのコメンタリー(bfi盤と全く同じもの、英語のため字幕なし)
●予告編(英語字幕付き)

封入ブックレットは『ギャング』(Criterion盤)以上に薄く8ページ。
掲載された文章の内容はGLENN KENNY氏による『WALKING GHOSTS』(4ページ、英語)だけです。
いぬ bfi
bfi(British Film Institude)というイギリスのメーカーから発売されている英語字幕付きのPAL盤。
PAL盤ということで、通常の国内DVDプレーヤーでは観られませんが、パソコンでは観られます。
気になる国内盤との違いですが、まず、画面比率が違います。
国内盤は【4:3】ですが、こちらは【1・66:1】というヨーロピアン・ビスタ・サイズ収録となっています。
いつも国内盤を観ていて、冒頭のタイトルロゴの右の部分が切れているのが気になっていたのですが、このDVDでは当然そのようなことはありません。
国内盤ではいわば左右端の映像を切っているためにロゴが切れているわけで、残念ですが、国内盤DVDには大きな欠陥があるとしか言いようがありません。
そして、bfi盤の画質は、セピアがかった色調が美しく高品位であり、音質も良いのが印象的。
本編は106分と、PAL盤特有のスピードアップによって、実際の時間よりも短くなっています。

そして、特典映像が豊富なのも嬉しい限り。
私も初めて観る予告編、助監督を務めたフォルカー・シュレンドルフの最新インタビュー(英語で13分ほど)、メルヴィルのバイオグラフィー、ジネット・ヴァンサンドーによる英語によるintroductionと音声解説(オープニングからモーリスが奪った札束と宝石を街灯の下に埋めるところまで、シリアンが刑事に電話するところからテレーズを縛り付けてモーリスの仕事場を吐かせるところまで、モーリスが車でシリアンの家に向かうところからラストまでの3箇所)などです。
『フェルショー家の長男』
フェルショー家の長男 RENE CHATEAU VIDEO
RENE CHATEAU VIDEOから2007年に発売されたPAL盤DVD。
現在のところ、フランスAmazonのみで購入できるようです。
ジャン=ポール・ベルモンド、シャルル・ヴァネル主演作であり、公開当時フランスでもかなりのヒットを記録したこの作品が、いまだ国内未公開であるのみならず、世界的にもVHSも含め、ソフト未発売であったのは不思議なことでしたが、とにもかくにも、こうしてDVDが発売されたことを喜びましょう。
ただ、このDVDには字幕がないので、フランス語が分からないと映画を理解することは大変厳しいです。(アメリカを舞台にした作品なので、本編では若干の英語も使われていますが)
また、RENE CHATEAU VIDEOなので、例によって、特典がないどころか、本編再生以外のメニューも皆無で(チャプターもなし)、一昔前の何のそっけもないDVDを思い起こさせるのが非常に残念。
パッケージの雰囲気は悪くないのですけどね・・・。
画質は、マスタリング(?)に若干甘さを感じさせますが、作品を味わうのに大きな不満はありません。
収録時間は100分。
『ギャング』
ギャング 米クライテリオン
米Criterionから発売されている輸入盤。
この作品はいまだに国内盤DVDは発売されておりませんし、英語字幕付きの海外盤DVDもこれが唯一のものと思われますので大変貴重です。
リージョン1なので、通常の国内DVDプレーヤーやパソコンでは観られないのが残念。
さすがはクライテリオンだけあって、画質は素晴らしいです。
ただ、↓のRENE CHATEAU VIDEO盤に比べますと、僅かですが、画質が落ちるような感もあります。
しかし、気にならない程度でしょう。
画面比率は【1.66:1】

国内VHSビデオの本編の時間が約150分であったにもかかわらず、このDVDの本編の時間が144分とパッケージに記述されているのが大変気にかかりましたので、実際確かめてみたのですが、きちんと約150分ありました。(オープニングクレジットからエンドクレジットまで含む)
よって、当然といえば当然ですが、PAL盤ということはありません。
ちなみに、ルイ・ノゲイラ著『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』における作品資料でも150分となっています。
このDVDのパッケージは何かのミスでしょうか。

特典映像の内容は以下の通り。

●ジネット・ヴァンサンドーとGeoff Andrewによる映画ほぼ全篇に渡るコメンタリー(二人とも英語のため字幕なし)
●ベルトラン・タヴェルニエの最新インタビュー(11分、カラー、英語のため字幕なし)
●『PROVENCE ACTUALITES』(『ギャング』のラストシーンの撮影風景、メルヴィル、リノ・ヴァンチュラ、ポール・ムーリッスのインタビュー、モノクロ、4分)
●『CINEMA』(ジェンネル・スタジオにおけるメルヴィルのインタビュー、途中に『ギャング』のメイキング映像、リノ・ヴァンチュラの7分に及ぶインタビューあり。モノクロ、25分)
●予告編(英語字幕付き)

ヴァンサンドーとアンドリューのコメンタリーは、映画を題材にさまざまなことを交互に語っているという形態です。
なかなか貴重な話満載の模様。

少々残念なのは、封入ブックレットが16ページと薄かったこと。
掲載された文章の内容はAdrian Danks氏による『AFTER THE FALL...』(5ページ、英語)だけでした。
ギャング RENE CHATEAU VIDEO
RENE CHATEAU VIDEOなるフランスのレーベルから出ているPAL盤DVD。
モンパルナスのヴァージン・レコードで19.90ユーロで購入しましたが、他のヴァージンの店舗ではセール価格の9.90ユーロで売られていて、ちょっとガッカリでした(^^;)。
PAL盤なので、通常の国内DVDプレーヤーでは観られませんが、パソコンでは観られます。

内容は国内のレンタルビデオ(VHS)で出回っているヴァージョンと変わらぬようですが、画面比率は【1・66:1】というヨーロピアン・ビスタ・サイズ収録で、画質の素晴らしさは当然のことながら比較になりません。(冒頭の脱走シーンもよく見えます!)
ただ、このレーベルの特徴のようですが、チャプターがないのが長い映画だけに少々不便です。
フランス本国盤ということもあって、英語などの字幕も一切ありませんので、フランス語が分からない方、初めて観る方には薦められません。
本編の時間も140分と、PAL盤特有のスピードアップによって、実際の時間よりも短くなっています。
特典は貴重な予告編、リノ・ヴァンチュラ、ジョゼ・ジョヴァンニ、メルヴィルのフィルモグラフィーなど。
リンク先のフランスAmazonのパッケージが違っていますが、内容は同じものと思われます。
それにしても、この傑作の日本盤DVDはいつ発売になるのでしょうか・・・。
『サムライ』
サムライ Cinefil Imagica
残念ながら現在廃盤の国内盤DVD。
Amazonやヤフオクなどの中古市場ではプレミアがついており、一般には入手困難な状況が長く続いております。
ファンの僻みかもしれませんが、これほどの名作のDVDが存在しないとは映画ファンの不幸ではないでしょうか。
早急な再DVD化が求められます。

当DVDの本編は105分。
通常の尺での収録であり、PAL変換マスターによるスピードアップはなされておりませんし、当然、ピッチが高いという問題もありません。(サントラCD『Jean-Pierre Melville/Le Cercle Noir』とのピッチの比較で確認済み)
昨今、ヨーロッパ映画の国内盤DVDといえば、PAL盤DVDが多数を占める中、この点は高く評価したい点です。

しかしながら、当DVDの映像のクオリティは決して高いとは言えません。
勿論、レンタルビデオに出回っているような過去のVHSビデオに比べれば、こちらの方が画質は断然上です。
私も当DVDでこの作品を観た当初は、元々こういう映像なのかな、と思ったくらいで、特に不満は感じなかったのですが、後に米Criterion盤、仏RENE CHATEAU盤を観た後には、当DVDの映像の解像度が明らかに低く、海外盤DVDに比べてかなり見劣りがすることが分かってきました。(映画冒頭のベッドでジェフがタバコを吸うシーンだけでも一目瞭然)
したがって、音質もそれに準じたものとなっています。
この作品のDVD再発が叶うならば、是非ともニューマスター版での発売が期待されるところです。

そして、当DVDは、字幕にも問題があります。
特に問題と思われる箇所は、オリヴィエ・レイ一味が事後策を協議しているシーンです(当DVDでは本編49分前後)。
そこでは“証人=ジェフ”を殺そうと協議されているはずのシーンが、まるで“証人=ピアニストのヴァレリー”であるかのような誤解を与えかねない字幕となっているのです。
米Criterion盤の英語字幕などを参考にしますと、この箇所に限らず、当DVDの字幕は、この作品の過去の国内VHS作品に比べても、総じてとまでは言いませんが、字幕のレベルが低くなっているように感じられてなりません。

封入物はチャプター表1枚のみ。
作品解説は、メニュー面から選択する、画面におけるパンフレット形式の映画解説となります。
その内容は…
『PRODUCTION NOTES』にて作品の解説。(解説担当者不詳)
『STAFF/CAST』ではメルヴィル、アンリ・ドカ(撮影)、フランソワ・ド・ルーベ(音楽)、アラン・ドロン、ナタリー・ドロン、ミシェル・ボワロンの簡単な紹介と出演作(関連作)リストの紹介。(これも解説担当者不詳。個人的にフランソワ・ペリエ、カティ・ロジェの紹介がないのは残念)
映像特典の類は皆無で、予告編、フォトギャラリー等も収録されていません。

ところで、極めて地味な点ですが、私がこのDVDで個人的に好きな点は、チャプターのタイトルがなかなかふるっている点です。
例えば、警察でヴィエネル氏やヴァレリーがジェフのアリバイを証明してしまうチャプターのタイトルは『不在証明』、小鳥がジェフに盗聴器の存在を知らせるチャプターのタイトルは『友の忠告』、ラストシーンのチャプターのタイトルは『サムライの決着』という塩梅です。
サムライ 米クライテリオン
いかにもクライテリオンらしいクールなデザインが印象的なパッケージ。
残念ながら、リージョン1のため、通常の国内のDVDプレーヤー、パソコンなどでは観ることができませんが、RENE CHATEAU VIDEO盤ほどではないにせよ、国内盤に比べてもかなりクリアな映像であり、よりフィルムライクな印象があるのはクライテリオンならでは。
セリフの少ない映画ですし、英語字幕付きですので、鑑賞にさほど不便を感じないのではないでしょうか。
国内盤DVDが廃盤である現在、この盤の存在は極めて大きいと思われます。
本編は105分。
画面比率は、【1・85:1】。

この盤の大きな魅力はやはり特典映像でしょう。
内容は以下の通り。

ルイ・ノゲイラの最新インタビュー(12分、カラー)
ジネット・ヴァンサンドーの2003年のインタビュー(18分、カラー、英語のため字幕なし)
●メルヴィルのインタビュー映像(10分、モノクロ、1970年9月11日放送)
●メルヴィルのインタビュー映像(ジェンネル・スタジオの火災の模様を報じたニュース映像、2分、モノクロ、67年6月29日放送)
●アラン・ドロンのインタビュー(4分、モノクロ、67年10月23日放送)
●ナタリー・ドロンのインタビュー(3分弱、モノクロ、68年4月25日放送)
●カティ・ロジェのインタビュー(4分弱、モノクロ、70年7月31日放送)
●フランソワ・ペリエのインタビュー(1分、カラー、82年6月13日放送)
●オリジナル予告編

インタビューの時期はそれぞれ異なりますので、必ずしもこの作品に限定した話が聞けるわけではありませんが、中でも驚きの映像は、この作品の撮影中に起きたジェンネル・スタジオの火災当日のメルヴィルのインタビュー。
まさかこんな映像が残っているとは想像もしませんでした・・・。

そして、29ページに及ぶ貴重写真満載の封入ブックレットには…
●David Thomson氏による『DEATH IN WHITE GLOVES』なるエッセイ(4ページ)
●ジョン・ウーによる『THE MELVILLE STYLE』なるエッセイ(5ページ)
●ルイ・ノゲイラ著『Melville on Melville』(『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』の原書の英訳版)の『サムライ』の項の抜粋(8ページ)
が掲載されています。(すべて英語)
サムライ RENE CHATEAU VIDEO
RENE CHATEAU VIDEOなるフランスのレーベルから出ているPAL盤DVD。
シャンゼリゼのヴァージン・レコードでセール価格の9.90ユーロでゲットしました。(^^)
PAL盤なので、通常の国内DVDプレーヤーでは観られませんが、パソコンでは観られます。

驚くべきは、国内盤に比べ明るくクッキリとした映像で、冒頭でジェフが寝ながらタバコを吸っているシーンや、外に出て車を盗むシーンでの雨など、これまでの国内DVDでは分からなかったような細かいところまでがこのDVDではよく見えます。
国内盤のくすんだような映像も味わいがあり、好みが分かれるところかもしれません。
このレーベルの『ギャング』同様、チャプターもなく、英語などの字幕もありません。
本編は100分で、PAL盤特有のスピードアップによって、実際の時間よりも短くなっています。
特典に1963年の『地下室のメロディー』撮影時のドロンのインタビュー(63年ということもあり、内容は『サムライ』とは何の関係もありません)、予告編、37枚に及ぶ貴重なフォトショット、ドロン、メルヴィルのフィルモグラフィーなど。
  サムライ Pathé
2011年12月にPathéフランスから発売された『サムライ』のHDマスター修復版Blu-rayとPAL盤DVDの2枚組限定盤。(DVD単品の発売もあり)
特典映像も含めBlu-rayとDVDの内容は全く同一ですが、ブルーレイは映画本来の尺によって正常なピッチで収録され収録時間約105分。
DVDはPAL盤のスピードアップのため収録時間約100分。

ただし、残念ながらBlu-rayはリージョンの違いによって日本国内のBlu-rayプレーヤーでは再生できません。
通常、国内のBlu-ray再生機能付パソコンでも再生できませんが、私はSlySoft 社のAnyDVD HDを以前購入し、Blu-ray再生機能付パソコンにダウンロードしておりましたので、パソコンで観ることができました。
一方、PAL盤DVDも国内のDVDプレーヤーでは再生できませんが、パソコンでは再生できます。
このソフトに限らず、リージョンの問題は本当に厄介ですね。
まぁ、国内盤が出れば一挙解決なんですが…。

字幕はフランス語のみですが(画面から消すことは当然可能)、これはこれで大変貴重。
字幕付で本編をざっと見た感じでは、映画のすべての台詞を表示しているわけではないようですが、それでも仏語が解る方にはこの映画を解く大きな鍵となることは間違いないでしょう。

ところで、HDマスター修復版ということで大いに気になるBlu-rayの画質について。

あくまでもパソコンの画面上での印象ですが、これまで観てきた米クライテリオン盤や仏RENE CHATEAU盤に比べ、Blu-rayらしいきめ細かな美しさは感じられるものの、全体的に青くもやのかかったような暗めの色調なのです。
いわばダークブルートーンとでもいった印象で、いくらブルートーンの印象の強いメルヴィル映画とはいえ、『仁義』や『リスボン特急』に比べまだそれほどでもなかったはずの『サムライ』でこれはちょっとやりすぎでは?という印象を正直なところ持ちました。

実際、amazonフランスのこの修復版に対するレビューを見ましたら、これがまたボロクソな評価だらけなのです。
簡単に言うと、色を塗りたくって色調を変えてしまった…と。
買ってはいけないと訴えているレビューすらあります。
私自身はパソコンで観ているせいでしょうか、そこまで酷いとは思いませんでしたが、それでも、これらの評価に説得力があるのもまた確かです。(できたらパソコンではなく、大画面で確認したいところなのですが…)
とにもかくにも、世界中のファンが待ちに待った修復版Blu-rayが期待を裏切った形となっているのは大変残念なことといえましょう。

特典映像は4点。(時間はBlu-rayのもの)
●”Melville-Delon:de l'honneur à la nuit”なるメルヴィルとドロンの関係に焦点を絞った2011年製作のドキュメンタリー。(23分)
監督はドキュメンタリー『コードネームはメルヴィル』の監督でもあるオリヴィエ・ボレール。
そのせいか『コードネーム』からのインタビュー映像が数多く収録されています。
インタビューの出演者はローラン・グラッセ、レミ・グランバック(ともにメルヴィルの甥)、フォルカー・シュレーンドルフ、ルイ・ノゲイラ。
●公開時のテレビ番組におけるアラン・ドロンのインタビュー映像。
クライテリオン盤にも入っていた特典映像と同一のものですが、こちらの方が後半が1分ほど長く収録されています。(5分、モノクロ)
●映画撮影時と思われるテレビ番組におけるメルヴィル監督のインタビュー映像。
インタビューの場所は“ジェフ・コステロの部屋”(4分、モノクロ)
●予告編。

パッケージは通常のプラスチックではなく、厚紙の表紙に2枚のディスクとブックレットが組み込まれたデジブック形式。
31ページのブックレットには先年亡くなったアラン・コルノーの序文(手書き)、『le samouraï “disparaître de son vivant”』と題したJean-Baptiste Thoret氏の解説(仏語)、撮影時の貴重な写真等が掲載されています。
『影の軍隊』
影の軍隊 東北新社
東北新社から発売された『影の軍隊』初の国内盤DVD。
残念ながら現在廃盤。
このような名作が廃盤とは悲しい限り。
あまり売れなかったのかなぁ。
この盤に限らず、東北新社のDVDは突然廃盤になることがあるので注意が必要です。
実際、私もメルヴィル作品に限らず、このレーベルのもので入手しそびれたDVDがたくさんあります。
このDVDは、廃盤になった後、一時ネットオークションでも価格が高騰していましたが、2007年11月にユニバーサルから再び国内盤が発売されることが決まって、価格も落ち着いてきたようです。
本編は137分ですが、いわゆる完全版とほぼ同内容のようです。
画質もピエール・ロム監修のUPJ盤に比べると質感は落ちますが、まずは満足できる仕上がりです。
影の軍隊 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2007年、待望の国内盤再発。
しかも1500円という驚異的な廉価での発売です。(2007年11月現在)
作品の内容はすでに定評あるところですので、ここではこの盤ならではの特徴をざっと挙げてみましょう。

良いと思われる点
●DVD冒頭(フランス語で“修復版”の文字)や、エンドクレジットに明記されているように、撮影監督ピエール・ロムによって修復された映像が使われているので、画質が大変美しい。
●カットなしのいわゆる“オリジナル完全版”であり、当然英語版(大幅カット、別テイク使用)とも異なる。
●発売前に一部で心配されていた音声は、無事オリジナルのフランス語。

良くないと思われる点
●使用されたマスターはPAL/NTSC変換されたものが使われているので、PAL特有のスピードアップにより、ピッチが高くなっている。当DVDの本編収録時間は139分で、クライテリオン盤の145分に比べ6分早くなっている。
●字幕は日本語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語で、いずれかを必ず選択、画面から消すことはできない。
●特典映像は、予告編とあまり上質とは言えないフォトギャラリーだけで物足りない印象。この点は価格を考えればいたし方ない気もします・・・。
●パッケージに「ジャン(ジャン=ピエール・カッセル)の裏切りによってアジトが急襲されるに及んで組織は逼迫。」とありますが、明らかに間違いですね。ジャン・フランソワの逮捕と、アジトであったタロワール男爵邸とは何の関係もありません。

私は米クライテリオン盤も所有しておりますので、それとも映像の印象を簡単に見比べてみましたが、画質はまず遜色ありません。
その点に関しましては、まず現時点で最高水準と言ってよく、文句のつけようがないのではないでしょうか。
ちなみに、字幕は以前の東北新社盤に比べると、丁寧な部分もありますが、少々雑と思われる点もあり、一長一短という印象です。
字幕の細かい問題に関しましては、ブログにて取り上げています。
影の軍隊 米クライテリオン
特典ディスク付きの2枚組DVD。
やはりリージョン1であるため、国内の通常のDVDプレーヤー、パソコンでは観ることができません。
しかし、この作品の国内DVDも現在廃盤のため、この映画のファンにとっては、クライテリオン盤の存在もまた大変大きいと思います。

ここに収録された本編は145分の完全版とのことですが、私が観る限り、リノ・ヴァンチュラ演じるフィリップ・ジェルビエがロンドンから南仏にパラシュート降下するまでの件が長いくらいで、ほとんど東北新社盤(137分)との違いはないようです。(見落としがあるかもしれません)
撮影監督のピエール・ロムが自ら監修したというこのDVDの映像はさすがに素晴らしい。
この映画の映像の大きな特徴であるブルー・グリーン・トーンが美しく引き立っていて、明晰さと共に、しっとりとした味わいがあるのもクライテリオンならでは。
本編の全編に渡ってジネット・ヴァンサンドーによるコメンタリーがあります。(英語のためコメントの字幕なし)
相当詳しいところまでコメントしているようなので、英語が聞き取れる方には大変重宝かと思います。

そして、なんといっても特典ディスクの内容が凄い。
大きく分けて、公開時の貴重映像と、最新インタビューに分けられますが、 まず、公開当時の古い映像としては、ポール・ムーリッス、ジャン=ピエール・カッセル、ポール・クローシェ、パッシー大佐役(本人)のアンドレ・ドゥヴァヴランと一緒に出演したテレビ番組(30分、メイキング映像、シモーヌ・シニョレ、原作者のジョゼフ・ケッセルのインタビュー映像もあり)、凱旋門のドイツ軍行進シーンを始めとするメイキング映像と共に紹介される撮影当時のメルヴィルのテレビ・ドキュメンタリー(4分程度)、そして、レジスタンス運動の紹介映像(私の所有するDVDプレーヤーの関係か、ここだけどうしても再生されませんので内容未確認です・・・)、そして予告編。

最新のものとしては、撮影監督ピエール・ロムのインタビュー(13分)、ロムによる映像のレストアの工程がよく分かる音声なしの検証映像(7分)、編集者フランソワーズ・ボノのインタビュー(10分、英語のため字幕なし)。
そして、2006年に製作された「メルヴィルと『影の軍隊』」と銘打ったドキュメンタリー映像。(27分)
『影の軍隊』を主なテーマにさまざまな人々のインタビューを通してメルヴィルの人となりが語られます。
出演は、ジャン=フランソワを演じたジャン=ピエール・カッセル、映画監督・評論家フィリップ・ラブロ、ピエール・ロム、作曲者エリック・ド・マルサン、フランソワーズ・ボノ、映画監督・評論家ベルトラン・タヴェルニエ。

このDVDを観て、国内盤DVDのクオリティーの高さも改めて確認しましたので、どちらにせよ、早く国内でもこの名作のDVDが再発されることを希望したいですね。(2007年11月、国内盤が再発されました!)
『仁義』
仁義 IVC
本編140分。
一つ前のDVD(CDサイズのパッケージのもの)がニューマスターと謳っていましたので、表示はないものの、それを踏襲しているものと思われます。最初観た時は、このメーカーにしては画質はマシな方だと感じていましたが、その後クライテリオン盤を観た後には、この画質はあまりにも物足りなく感じてしまいました・・・。もう全く別の映画だと言いたくなるくらい画質に差があります。せめてクライテリオン盤と同程度のクオリティのDVDが国内盤で出ていれば、日本におけるこの作品の評価も更に高いものになるのでは・・・と感じるのはファンの僻みでしょうか?・・・

あと、このDVDは、画面サイズにも大いに問題あり。
4:3という画面サイズの表記になっていますから、通常ならスタンダードサイズと表記されているはずですが、パッケージには“収録画面サイズ ビスタ”と記載されています。
これはどういうことかと言いますと、4:3のスタンダードサイズの横幅に収まるようにビスタサイズの横幅の画面が収まっている、つまり、上と下の部分が真っ黒という状態のスタンダードサイズの画面ということです。
なるほど、映画そのものの収録サイズはビスタになっているというわけです・・・。

私の所有している液晶テレビ(ワイド37型)では、画面サイズの変更ができますので、テレビの横幅に映画の画面を合わせて、上下の真っ黒な部分を消してみましたが(つまり、映像を拡大した)、そうしますと、なんと画面下の字幕が見えなくなってしまいます。
字幕がなくては映画の内容が理解できませんので、テレビの画面サイズを4:3のスタンダードにして、その中に小さく収まったビスタサイズの映画を観る羽目になりました・・・。
つまり、このDVDは、映像そのもののサイズはビスタで収録されているにもかかわらず、スタンダードサイズで観ることを前提として作られているというわけです。
また、映像を拡大しますと、画質のクオリティの低さが目に付いてしまうのも悲しい・・・。

この点、クライテリオン盤では、IVC盤で基本となっていた4:3のスタンダードサイズという前提そのものがありません。
つまり、最初から1.85:1の画面割合で映像が収録されていますので、私のテレビでは映像がそのままのサイズでしっかり観られました。(もともとこの作品の映像がそのサイズで撮られているのですから、当然といえば当然ですが・・・)
そのせいもあって、IVC盤とは、もう映画の臨場感というか映像の質感が段違いなのです。
IVC盤DVDではハッキリ見えない映像が、クライテリオン盤ではしっかり見えているという部分もたくさんあるくらいです・・・。

せっかくメルヴィルのDVDを出して下さっている貴重なメーカーさんに対して厳しい批判ばかりになってしまいました。
実際、現在この作品を観ようとする場合、今なお、ほとんどの人がこのDVDを手に取るはずであり、その功績は計り知れません。
その点は私もこの映画の一ファンとして大変感謝をしております。
しかし、国内には、紀伊国屋書店のようにクオリティの高いDVDを出すことに心血を注いでいる立派なメーカーもあります。
映画ファンの期待に応えるためにも、IVCさんにはもっともっと頑張ってもらいたいと思います。
   仁義  ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパン
IVC盤に続く新たな国内盤DVD。
Studio Canal盤が原盤らしく、PAL/NTSC変換されたマスターが使われているので、PAL特有のスピードアップにより、ピッチが高くなっています。
結果、当DVDの本編収録時間は135分で、正常の尺であるIVC盤、クライテリオン盤の140分に比べ5分短くなっています。(内容のカットはありません)

画質は最近ヨーロッパで出たブルーレイを観た後ではさすがに見劣りしますが、もちろんIVC盤とは比べ物にならないくらい良く、DVDとしてはおそらく最上。
若干色目が濃い目のクライテリオン盤に比べても、この盤の画質は発色が自然です。
また、IVC盤のようにワイドテレビで観ても字幕が画面の下に隠れてしまうということもありません。
廉価で出ていることもありますし(2011年1月現在)、IVC盤を持っている人は買い替えてもまず損はないはずです。

それと、特筆すべきはこの種の国内盤には珍しく、特典映像が収録されていること。
前もってこれといったアナウンスがなかっただけに、これは嬉しい驚きでした。

その特典映像の内容は…
●助監督ベルナール・ストラのインタビュー(2003年収録 カラー、30分)
●ルイ・ノゲイラ(『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』の著者)のインタビュー(2003年収録 カラー、26分)
●フォト・ギャラリー

上記インタビュー2篇はいずれもクライテリオン等海外盤に収録されていたものと同様の内容ですが、日本語字幕で見られるのはもちろん初めて。
どちらもファン必見の映像であり、『仁義』の撮影秘話はもちろん、ジャン=ピエール・メルヴィルという監督の特質を知る上で欠かせない証言ばかりなので、これらを観るだけでも、このDVDを買う価値はあると思います。

最後に、いつもユニバーサル盤で問題になる字幕について。
字幕の選択は日本語のみで、味も素っ気もない大きめの文字が気になります。(画面上から消すことは不可能)
字幕翻訳は須賀田昭子氏で、こうしてきちんとクレジットが出ることは良いことだと思いますが、これまで観てきたIVC盤の字幕とニュアンスの異なる表現が多々見受けられます。
概して今度のユニバーサル盤の方が丁寧な印象はありますが、どちらが原語のニュアンスに近いのかは現段階ではハッキリとは判断できません。
ブルーレイ(Studio Canal Collection)にはフランス語字幕が、クライテリオン盤等には英語字幕が付いておりますので、いずれ検証が必要でしょう。
仁義 米クライテリオン
特典ディスク付きの2枚組DVD。
なぜか米Amazonでの表記はリージョン1になっていますが、実際はリージョンALLなので、国内のDVDプレーヤーで安心して観られます。
本編の収録時間は140分。
PAL盤ではありませんので、当然映画本来の速度での収録です。
このDVDは映画本編の画質の良さももちろん素晴らしいのですが(英bfi盤に比べますと、映像の発色が濃い目のきらいがあります。↓の英bfi盤、↑のIVC盤の紹介も参照して下さい)、なんといっても特典映像が感動の嵐!
ジェンネルスタジオでのメルヴィルのインタビューなど、涙モノの映像が満載です。
注目すべき特典ディスクの内容は…

●『Cineastes de notre temps』…1971年7月にフランスで放送。ジェンネルスタジオでのメルヴィルのインタビューを中心としたドキュメンタリー番組(カラー、27分)
●『Pour le cinema』…70年3月放送。『仁義』のラストシーンの撮影風景を記録したもので、メルヴィル、アラン・ドロン、イヴ・モンタン、ブールヴィルの短いインタビューを収録。(モノクロ、5分)
●『Midi Magazine』…70年3月放送。『仁義』のビリヤード場のシーンの撮影風景を記録したもので、メルヴィル、ドロンの短いインタビューを収録。(モノクロ、5分弱)
●『Vingt-quatre heures sur la deux』…70年11月放送。メルヴィルとドロンが『仁義』の宣伝のために一緒にフランスのテレビ番組に出演した時の模様を収録したもの。(カラー、4分弱)
●『Excerpts from Morceaux de bravoure』…73年5月放送。『仁義』の製作秘話を中心としたメルヴィルのインタビュー(カラー、10分弱)
●助監督ベルナール・ストラのインタビュー(2003年収録 カラー、30分)
●ルイ・ノゲイラ(『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』の著者)のインタビュー(2003年収録 カラー、26分)
●予告編(仏オリジナル版と、2003年にリアルト・ピクチャーズによってアメリカで上映された際の版の2種)
●フォトギャラリー
●各国のポスター集(日本のものも!)
となっています。

そして、24ページに及ぶ封入ブックレットには…
●映画評論家Michael Sragow氏によるエッセイ(3ページ)
●ルイ・ノゲイラ著『Melville on Melville』(『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』の原書の英訳版)の『仁義』の項の抜粋(6ページ)
●『仁義』の音楽の作曲家エリック・ド・マルサンのインタビュー(2ページ)
●Chris Fujiwara氏のエッセイ(2ページ)
●ジョン・ウーによる紹介文(1ページ)
が掲載されています。(すべて英語)

ちなみに、私はこのDVDを「DVD Fantasium」で購入しました。
仁義 bfi
bfi(British Film Institude)というイギリスのメーカーから発売されている英語字幕付きのPAL盤。
本編の収録時間が134分と、140分のクライテリオン盤よりも6分、PAL盤特有のスピードアップで短くなっています。
特筆すべきは画質の良さで、クライテリオン盤よりも発色が自然な印象です。
メルヴィル映像独特のブルートーンも、このDVDが一番印象的に見えます。
『仁義』の数ある海外盤の違いについては、こちらのページで比較することができますので、是非ご覧になってみてください。
http://www.dvdbeaver.com/film/DVDCompare2/cerclerouge/cerclerouge3.html
特典映像は、予告編、メルヴィルの簡単なバイオグラフィー、助監督ベルナール・ストラのインタビュー(クライテリオン盤と同じもの)、ジネット・ヴァンサンドーのイントロダクション(他のbfi盤のメルヴィル作品と同じもの)。
圧巻は、本編ほぼ全体に渡る、ヴァンサンドーの英語によるコメンタリー。
コメントの字幕はないので、内容が理解できないのが残念です・・・。
仁義 StudioCanal Collection
StudioCanal Collectionから2010年秋に発売された、この作品初のBlu-rayディスク。
基本的にこのディスクは、仏英独の3か国でそれぞれ発売されており、私は英Amazonを通して購入したためか、パッケージ、ブックレット、メインメニューはすべて英語となっています。
フランス、ドイツ、それぞれの国のヴァージョン違いがあるのか否かは未確認です。

残念ながらこのディスクはリージョンの違いによって日本国内のBlu-rayプレーヤーでは再生できません。
通常、国内のBlu-ray再生機能付パソコンでも再生できませんが、私はSlySoft 社のAnyDVD HDを購入し、Blu-ray再生機能付パソコンにダウンロードしたので、パソコンで観ることができました。

映画本編の字幕は仏英独の3か国語が選択できるようになっています。(消すことも可能)
この作品をフランス語の字幕で観られるのがなかなか貴重といえます。
また、本編の音声はオリジナルであるフランス語とドイツ語が選択可能です。

気になる画質ですが、パソコンでの視聴ということで、これまで観てきたDVDとの単純な意味での比較はできないのですが、印象としてはさすがはBlu-rayといえるような画質の良さは感じられます。
色彩に潤いがあるといいましょうか、生々しさがあるといいましょうか…。
今や国内盤もユニバーサル盤(マスターはStudioCanal)の登場により、かなり良い画質で楽しめるようになりましたが、画質を極めるならば、やはりBlu-rayは避けて通れないでしょう。
Blu-rayには欧州版DVDのようなPAL盤特有のスピードアップもありません。
ちなみに、2011年4月、クライテリオンからも新たにBlu-rayが発売されましたので、国内盤のBlu-rayの登場も大いに期待されるところではあります…。

StudioCanal CollectionのBlu-rayの特徴として特典映像の素晴らしい内容が挙げられます。
もちろん、このBlu-rayも例外ではありません。
その特典映像の内容は…

●ジネット・ヴァンサンドーによるイントロダクション(bfi盤と同じもの カラー、21分 音声は英語のため字幕はフランス語とドイツ語のみ)
●『コードネームはメルヴィル』(オリヴィエ・ボレール監督によるメルヴィルのドキュメンタリー映画 2006年製作 76分 音声はフランス語のため字幕は基本的に英語とドイツ語のみ)
●助監督ベルナール・ストラのインタビュー(2003年収録 カラー、30分 音声はフランス語のため字幕は英語とドイツ語のみ)
●ジョゼ・ジョヴァンニのインタビュー(2003年収録 カラー、14分 音声はフランス語のため字幕は英語とドイツ語のみ)
●ルイ・ノゲイラ(『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』の著者)のインタビュー(2003年収録 カラー、26分 音声はフランス語のため字幕は英語とドイツ語のみ)
●予告編(フランス公開当時のもの 2分弱 字幕は英語とドイツ語のみ)

ベルナール・ストラとルイ・ノゲイラのインタビューは日本盤(ユニバーサル)、クライテリオン盤と全く同一のものですが、なんといっても本ディスクの特典映像の目玉はドキュメンタリー映画『コードネームはメルヴィル』が丸々収録されていることでしょう。
この作品はフランスでもBOX特典としてDVD化されていますが、英語字幕で観られるのは今のところこのディスクだけです。
これは、多くの関係者の証言や膨大な書類、写真を元に、メルヴィルの人となりや、主に幼少時から第二次大戦中の幻の足跡をたどった貴重極まりないドキュメンタリー映画です。

他にも、ジョゼ・ジョヴァンニのインタビューは個人的にとても観るのを楽しみにしていたものですが、話の内容は極めて辛辣で観ていて気分の良いものではありませんでした。
正直言って、メルヴィル・ファンにはあまり勧められません。

16ページに及ぶ封入ブックレットには、François Guérifという人によるこの映画の解説(英語)が掲載されています。
パッケージはプラスチックではなく、厚紙でできあがっており、好みの分かれるところかもしれません。
『リスボン特急』
リスボン特急 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパン
ようやく発売された国内盤DVD。
さまざまな評判のあるユニバーサルから発売されたわけですが、とりあえず1500円という廉価盤での発売(2008年現在)を喜びたいと思います。
この盤の特徴をいくつか挙げてみます。

まず、『Dirty Money』というアメリカ公開時のタイトルが印刷されたパッケージに興を削がれますが(原題は『Un Flic』)、パッケージに使われた写真も、ドロン、クレンナ、ドヌーヴは当然として、なぜに眼鏡姿のジャン=ピエール・ポジェが?
この映画のジャン=ピエール・ポジェの役といえば、列車でヤクの入ったカバンを渡すだけのチョイ役ですし、リカルド・クッチョーラ、マイケル・コンラッド、ポール・クローシェ、ジャン・ドサイーなど他に出てもよさそうな人はいるはずですが…。
ユニバーサル・ジャパンだけのせいではないのかもしれませんが、よく分からない選択です。

それはともかく、このDVD、本編が約96分と、PAL/NTSC変換されたマスターが使用されたPAL盤のようです。
PAL盤と思われる理由は次の通り。
●サントラCD『Jean-Pierre Melville:Le Cercle Noir』収録のイザベル・オーブレの歌『事が起こるように』と当DVDのピッチを比較した結果、明らかにDVDの方のピッチが高い。
●正しい尺での収録と思われる米Anchor Bay盤と当DVDのピッチを比較した結果、やはり当DVDのピッチが高い。

そこで一つ気になる点が、この映画の本編の収録時間です。
当DVDは約96分とパッケージに記載されております。
正しい尺での収録と思われる米Anchor Bay盤の表示は100分であり、PAL盤特有のスピードアップされた当DVDの96分に釣り合う収録時間となっているので、100分が正しいように思われるのですが、あのルイ・ノゲイラ著『サムライ』ではこの映画の上映時間は105分と記載されているのです。

100分と105分、どちらが正しいのでしょうか。

ちなみに、この映画の公開時パンフレットには、上映時間1時間40分(100分)、国内VHSは約99分と、ほぼ100分の収録時間、そして、ジネット・ヴァンサンドー著『Jean-Pierre Melville:An American In Paris』の記載は94分(英国での出版ゆえ、PAL盤DVDの尺を基準としたと思われる)となっています。

こう見てきますと、ルイ・ノゲイラ著『サムライ』の105分が一番不自然に感じられます。
この映画でどこかの場面がカットされたという話は聞いたこともないので、私の個人的推測となりますが、この映画の本編の上映(収録)時間は約100分と考えるべきなのではないかと思われます。

収録時間にこだわって考えてみましたが、多くの人にとって、気になる点は画質に関してでしょう。
実際のところ、当DVDは、PAL盤ということもあり、画質は良好です。
Anchor Bay盤とも簡単に比較してみましたが、ほとんど劣る感じはありません。
メルヴィル・ブルーもよく捉えられており、こと画質に関しては、安心して観られるDVDです。

特典はフォト・ギャラリーのみ。
これまでいろいろな媒体で見てきたこの映画の写真が比較的キレイな画像で見られるのはありがたいのですが、せめて予告編くらいは付けて欲しかったかな。

あと、同じユニバーサル盤の『影の軍隊』もそうでしたが、当DVDの字幕にもやはり大いに違和感があります。
また近く、ブログにおいて、当DVDの字幕の問題について取り上げてみたいと考えています。
リスボン特急 Anchor Bay
米盤ということもありリージョン1なので、通常の国内のDVDプレーヤー、パソコンなどでは観ることができません。
しかし、現在『リスボン特急』は国内盤DVDが出ておりませんので、こうして英語字幕付きでDVDが観られるのは貴重かと思われます。(追記:2008年11月、国内盤DVDが発売されました)
このAnchor Bay盤はすでに廃盤との情報もあり、現に米Amazonでは新品にプレミアが付いている状態です。
DVDFantasiumでは今のところ新品を定価で注文を受け付けていますので、お気になる方は早めに入手された方がよろしいかもしれません。

この映画はレンタルVHSをダビングしたものをずっと観ていましたが、このDVDの画質はそれに比べますと、さすがに段違いという印象です。
とりわけ、メルヴィル独特のブルー・トーンがここまで徹底していた映画だったとはこれを観るまで分かりませんでした。
本編100分。
特典映像は「予告編」のみですが、収録されているドロンとメルヴィルのバイオグラフィーがこの種のものにしては驚くほど詳しいのが嬉しい。

1946 『ある道化師の二十四時間』(未登録) 1962 『いぬ』
1947 『海の沈黙』 1962 『フェルショー家の長男』
1949 『恐るべき子供たち』 1966 『ギャング』
1953 『この手紙を読むときは』 1967 『サムライ』
1955 『賭博師ボブ』 1969 『影の軍隊』
1958 『マンハッタンの二人の男』 1970 『仁義』
1961 『モラン神父』 1972 『リスボン特急』