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INTRODUCTION


『Le Samourai』

故ジャン=ピエール・メルヴィル監督は、一般的にフレンチ・フィルム・ノワールの巨匠として知られていますが、実際のところ、昨今ではどれだけその作品が知られて(観られて)いるのでしょうか。
幸い、いくつかの主要作品はDVD化されていますが、半数近い作品が国内でDVD化されておらず、ファンからすると、とても満足とは程遠い状況が続いています。
いまだに国内未公開の作品もいくつかありますし、最重要作品の一つである『サムライ』のDVDも廃盤です。(追記:2016年、ようやく『サムライ』のブルーレイとDVDが発売されました)
もちろん、劇場で公開されることも全くと言ってよいほどないような状況です。(追記:2009年東京で大規模な回顧上映会が行われ、ようやく全作品が日本でも公開されました)

フランス映画の著名な評論家である山田宏一氏ですら、1989年の段階で
『「ヌーヴェル・ヴァーグの先駆者」とか、「最もアメリカ的なフランスの映画作家」とか、「暗黒街映画の巨匠」とかいったジャン=ピエール・メルヴィルの神話はもうすぐ映画史から消えてしまうのではなかろうか。いや、すでにもう忘却の闇に葬られつつあるのではなかろうか。』と書いているほどです。

確かに、メルヴィルの死からすでに30年以上の歳月が過ぎ、その作品群もある程度人々の記憶から消えつつあるのは事実かもしれません。
しかし、私は、その作品世界が今もって決して褪せることのない魅力と、独自の普遍的なオーラを放っていると信じてやまない一人です。

私は、数年前からメルヴィルの作品を観始め、すぐにその作品世界に強く惹かれるようになりました。
気がつくと関連DVDを次々と買い集め、国内DVD化されていない作品はレンタルしたり海外から取り寄せたりして、可能な限り彼の作品を観るようになりました。
それ以前から映画と音楽のHP(閉鎖しました)を立ち上げており、当然いくつかのメルヴィル作品も紹介してきましたが、残念ながら反応らしい反応もほとんどありませんでした。
また、メルヴィルのファン・サイトと言えるものも国内にはどうやら存在しないようで、一ファンとして長い間寂しい思いをしておりました。(ちなみに、mixiにはいまだに登録しておりません)

いっそのこと、自分でメルヴィルのサイトを立ち上げたらどうか…そのような欲求が徐々に芽生え始めてきたのも不思議ではありません。
ただ、私はメルヴィル作品に特別詳しいわけでもありませんし、何より、まだ未見のメルヴィル作品がいくつもあります。(その後、海外盤DVDのお蔭でとりあえず全作品を観ることができました)
にもかかわらず、こうしてHPを立ち上げた理由は、世に相当数いるであろうメルヴィル・ファンとの情報交換の場が欲しかったからと、彼の作品に興味のある人はもちろん、彼の作品を知らない人にも、その魅力の一端を伝えることができたら、と思ったためです。

彼の映画は、主に暗黒街が舞台で、それも夜、雨、鏡、トレンチコート、ソフト帽、酒、タバコ、ナイトクラブ、踊り子などが重要なモチーフとして登場しますが、その作品に一貫して流れるテーマを挙げるならば、“男の友情と裏切り”ということになりましょうか。
もちろん、彼の作品をそれだけのことに限定はできませんが、代表的なフィルム・ノワール作品の特徴を大雑把に言えばそうなるでしょう。(もちろん、フィルム・ノワール作品だけが彼の魅力ではありません)
押井守氏に言わせれば、メルヴィルの映画とは“自分の信ずるところに殉じて死んでしまう男の映画”ということになります。
彼の作品中で、ときに登場人物は友情を取るか裏切るかの選択を迫られます。
ときに人は保身のために仲間を裏切る。
しかし、ときに人は己の命を賭けても仲間を守ったりする。
そこが実に厳しく、しかし魅力的に描かれているのです。

また、メルヴィルの映画は、極めてセリフが少ないことでも知られています。
いわば、言葉で語らず映像で語る。
男たちも、男と女も、ちょっとしたアイコンタクトだけで意志を通じ合わせます。

一つだけ例を挙げるとすれば、『仁義』でアラン・ドロンと、ジャン・マリア・ヴォロンテが知り合う場面。
逃亡犯であるヴォロンテが、結果的に逃亡を助けることになったドロンに「俺が平気なのか?」と聞く。
その言葉にドロンは答えず、無言でタバコとライターをヴォロンテに投げて渡す。
逃亡中でタバコに飢えていたヴォロンテは、美味そうにタバコを吸い、ライターをドロンに投げ返す・・・たったそれだけのやり取りの中で、お互いを認め合う・・・いわば仁義の契りを交わすわけです。
メルヴィル美学とも言いたい名場面の一つで、ファンとすればこれだけでもう痺れてしまいます。
また、ドロンのライターの受け取り方が最高にカッコ良いんですよね(笑)。

HPのタイトルである「LE CERCLE ROUGE」は、もちろん『仁義』の原題で、人間同士をつなぐ運命の赤い輪のことを表しています。
こうして、メルヴィルを通じて、僅かながら皆さんと関わりを持てるのも何かの“運命”だと思いますので(笑)、僭越ながらタイトルにさせていただいたわけです。

また、このサイトを立ち上げるにあたって、DVDやビデオなどの現在鑑賞可能なメルヴィル作品はもちろん、「サムライ ― ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生」(ルイ・ノゲイラ著、井上真希訳 晶文社)を主に参考にさせていただきました。
メルヴィルについて書かれた本は驚くほど少ないわけですが、これは2003年に刊行されたばかりの国内唯一のメルヴィル本であり、対談形式で彼自身が自作について語っている、全くもって貴重な本です。
なにより、このような本が国内で発売されたこと自体奇跡的であり、一ファンとして、どんなに感謝してもし過ぎることはないと思っています。
今は一ファンとして、 メルヴィルの回顧展が上映されたり、DVD・BOXなどが発売されることを願ってやみません。(追記:2009年東京で大規模な回顧上映会が行われました)

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管理人紹介
ハンドルネーム マサヤ
居住地 東京都
メルヴィル作品で特に好きな俳優、女優 好きな人がたくさん居過ぎて困るが、現在は『仁義』イヴ・モンタン『モラン神父』エマニュエル・リヴァ
メルヴィルで一番好きな作品 『仁義』『ギャング』。最近とみに魅力を感じるのは『マンハッタンの二人の男』
メルヴィル以外で好きな映画 『旅路の果て』、『どん底』(ルノワール)、『埋れた青春』、『マルタの鷹』、『天井桟敷の人々』、『アスファルト・ジャングル』、『抵抗』、『穴』、『マンハッタンの哀愁』、『冒険者たち』、『モード家の一夜』、『さらば友よ』、『Z』、『恋のエチュード』、『北の橋』、『去年マリエンバートで』、『ミッドナイト・ラン』、『マルホランド・ドライブ』などなど。
メルヴィル以外で好きな映画監督 デュヴィヴィエ、ベッケル、アントニオーニ、タチ、ロメール、シャブロル、リンチ、成瀬など。
希望・要望 全メルヴィル作品の国内盤DVD化を強く希望!できればブルーレイを!特に『ギャング』は是非!