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『ギャング』
『Le Deuxième Souffle』
(1966)

スタッフ キャスト レビュー あらすじ

スタッフ
製作: モンテーニュ・プロ Les Productions Montaigne/Charles Lumbroso
製作代表: シャルル・ランブロンゾ Charles Lumbroso
同: アンドレ・ラベイ André Labay
製作主任: アラン・クフェレアン Alain Quéffélean
原作: ジョゼ・ジョヴァンニ José Giovanni 『Le Deuxième Souffle』 (邦訳『おとしまえをつけろ』 岡村孝一訳 早川書房刊)
脚本・脚色・監督: ジャン=ピエール・メルヴィル Jean-Pierre Melville
脚本・脚色: ジョゼ・ジョヴァンニ José Giovanni
助監督: ジャン=フランソワ・アダン Jean-Francois Adam
同: ジョルジュ・ペルグラン Georges Pellegrin
撮影監督: マルセル・コンブ Marcel Combes
カメラマン: ジャン・シャルヴァン Jean Charvein
撮影助手: ジャック・ニベール Jacques Nibert
同: ジャン=クロード・ブッサール Jean-Claude Boussard
記録: シュザンヌ・デュランベルジェ Suzanne Durrenberger
録音担当(音取り): ジャック・ガロワ Jacques Gallois
進行助手: フランシス・ペルティエ Francis Pettier
美術: ジャン=ジャック・ファーブル Jean-Jacques Fabre
装置: ギィ・モージャン Guy Maugin
装飾(セット): ジャン・カルドー Jean Dardeau
装飾(家具): ダニエル・ヴィルロワ Daniel Villeroy
室内装飾: クロード・テリー Claude Thery
宝石: ポーレット・ロービー Paulette Laurie
衣装: ミシェル・テラン Michel Tellin
毛皮: マックス Max
音楽: ベルナール・ジェラール Bernard Gerard
録音監督(およびミキサー): アレックス・プロン Alex Pront
編集: モニーク・ボノ Monique Bonnot
同: ミシェール・ボエーム Michèle Boehm
編集助手: カトリーヌ・ムーラン Catherine Moulin
同: ジヴァ・ポステック Ziva Postee
製作事務(パリ): ロベール・ポルト Robert Porte
製作事務(マルセイユ): マルセル・コランソン Marcel Correnson
渉外: ルイ・スーレ Louis Seuret
協力: アンリ・ティケ Henri Tiquet、フランソワ・デュポン=ミディ Francois Dupont-Midy、クロード・ウェリア Claude Veriat、ロジェ・コソン Roger Cosson
映画冒頭のエピグラフ: L'Auteur de ce film n'entend pas assimiler la “morale” de GUSTAVE MINDA à la Morale.Il tient à preciser que les circonstances, les situations et les personnages de cette histoire n'ont aucune base réelle et que, par conséquent il ne peut être question de porter un jugement sur les méthodes d'enquête à partir de cette oeuvre d'imagination inspirée par un roman.

A sa naissance, il n'est donné à l'homme qu'un seul droit : le choix de sa mort. Mais si ce choix est commandé par le dégoût de sa vie, alors son existence n'aura été que pure derision...


この映画の製作者は、ギュスターヴ・マンダの仁義と道徳を同列に考えない。
この物語の状況も人物も現実のものではなく、従って、小説からの想像による捜査手段に、ある判断を下すことは問題外である。

人間は生来、1つの権利が与えられている。
それは死の選択であるが、選択が生への嫌悪による時はバカげている。


キャスト
ギュスターヴ・マンダ Gustave Minda: リノ・ヴァンチュラ Lino Ventura
ブロ警部 inspecteur Blot: ポール・ムーリッス Paul Meurisse
ポール・リッチ Paul Ricci: レイモン・ペルグラン Raymond Pellegrin
マヌーシュ Manouche: クリスティーヌ・ファブレガ Christine Fabrega
ジョー・リッチ Jo Ricci: マルセル・ボズフィ Marcel Bozzufi
アルバン Alban: ミシェル・コンスタンタン Michel Constantin
オルロフ Orloff: ピエール・ジンメル Pierre Zimmer
ファルディアノ警部 inspecteur Fardiano ポール・フランクール Paul Frankeur
アントワーヌ・リッパ Antoine Ripa: ドニ・マニュエル Denis Manuel
パスカル・レオネッティ Pascal Léonetti: ピエール・グラッセ Pierre Grasset
ネバダ一味に変装した刑事: ジャン・ネグロニ Jean Négroni
アンリ・ツールヌール: ジャック・レオナール Jack Léonard
ルイ・バルテル: シルヴァン・レヴィニャック Sylvain Levignac
“公証人”ジャック Jacques le Notaire: レーモン・ロワイエ Raymond Loyer
脱走犯ベルナール: ロジェ・フラデ Roger Fradet
ジャノ・フランキー Jeannot Franchi: アルベール・ダニャン Albert Dagnant
ブロの側近刑事: ジャン=クロード・ベルク Jean-Claude Bercq
バーテンダー マルセル: アルベール・ミシェル Albert Michel
警察病院の刑事: マルセル・ベルニエ Marcel Bernier
刑事: ルイ・ビュジェット Louis Bugette
リッチ兄弟の店の客: ピエール・ヴォディエ Pierre Vaudier
その他の出演: レジス・ウタン Régis Outin、ロジェ・ペリノ Roger Perrinoz、ジャン・ド・ボーモン Jean de Beaumont、J・デュボ J.Dubos、ピエール・ガルディ Pierre Gualdi、ベティ・アングラード Betty Anglade

モノクロ
150分。配給 = プロディス。
1966年2月から3月及び6月から8月までパリ、マルセイユにてロケ撮影、ジェンネル撮影所にてセット撮影。
パリ公開 = 1966年11月2日。
日本公開 = 1967年6月24日(短縮版2時間)。 配給 = 日本ヘラルド映画。
国内盤DVDなし。国内VHSビデオレンタルあり。海外盤DVDあり。海外DVD情報はこちら

なお、スタッフやキャスト等のデータに関しましては、主に「サムライ」(ルイ・ノゲイラ著、井上真希訳、晶文社刊)、「キネマ旬報 1973 616」(シネ・ブラボー ジャン=ピエール・メルヴィル追悼(1)山田宏一)、「Jean-Pierre Melville/An American in Paris」(Ginette Vincendeau著)の3冊を参考とさせていただいております。
また、スタッフの役職名等、映画本編のエンドクレジットとは多少表記が異なると思われる部分もございます。

スタッフ キャスト レビュー あらすじ


レビュー
ジョゼ・ジョヴァンニ原作の小説の映画化で、ジェンネル・スタジオで撮影されて完成した最後の作品。(スタジオは『サムライ』撮影中の67年6月29日に火事で焼失)
なんともシンプルなタイトルの邦題が付いていますが、原題の意味は「第二の息吹き」。
これは、ギャング仲間の隠語で、投獄された男が脱獄して、もう一度大仕事を実行することの意味だそうです。

脚本はジョゼ・ジョヴァンニとメルヴィルの共同によるもの。
原作は読んでいないので分かりませんが、メルヴィル本「サムライ」を読む限り、映画化にあたってメルヴィルは、原作をかなり彼のオリジナルなものに変えてしまっているようです。(追記:この後、原作を読みました。こちらを参照)
そのことによって、メルヴィルとジョヴァンニの間には激しい対立があったようですが、詳しいことはよく分かりません。
(74年のジョヴァンニのインタビュー(山田宏一著「映画とは何か」)で、ジョヴァンニはそのことでメルヴィルを責めてはいませんが、すでにメルヴィルこの世になく、撮影から10年近くも経っていますので・・・)

メルヴィルは、64年にセルジュ・レジアニ、シモーヌ・シニョレ、リノ・ヴァンチュラらのキャストでいったん映画化の契約を結びますが、ある事情で流れてしまいます。
その後、ラ・パテリエール監督による映画化の計画が立てられたりしましたが、結果的に、メルヴィルに監督が廻ってくることになります。
しかし、それはなんとクランクイン4日前のことだったとか。
撮影監督がマルセル・コンブになっているのはそういった事情のためだそうです。(しかし、それがこの映画の弱点に決してなっていないのはさすが)

作品の内容は、当然のことながら、単なる犯罪アクション映画ではなく、裏社会の信頼と裏切りを徹底して描いた作品です。
2時間半に渡る大作であり(完全版は2時間50分という説もあり)、ギュとジョー・リッチの関係等、細かい部分で分かりにくいところがあるのは確かなのですが、大筋のストーリーは決して難解ではなく、その面白さにグイグイ惹き込まれます。

オープニングも印象的。
全く無言の中決行される脱獄劇、そして脱走者たちが森の中を走り去る間に流れるタイトルバック。
列車になんとか潜り込んだ後の脱走者同士の無言の別れ、一息ついてタバコを吸うヴァンチュラ、そこからマルセイユのポール・リッチのナイトクラブへ・・・いかにもメルヴィルらしい見事なオープニングです。

それにしても、登場人物一人一人の個性を短い描写で端的に描いてみせる能力には脱帽です。
また、その一人一人のキャラクターが一癖も二癖もあり、魅力的。



ポール・リッチを演じたレイモン・ペルグランは、その出演がメルヴィルが監督を引き受ける条件だったというほどで、さすがにアクの強い風貌がそれらしく印象的。
ギュを助けるバーテンダー、アルバンを演じたミシェル・コンスタンタンは同じくジョゼ・ジョヴァンニ原作の「穴」(ジャック・ベッケル監督)にも出演していた俳優。
実に“ジョヴァンニくささ”を感じさせる俳優であり(事実、この後にもジョゼ・ジョヴァンニ監督作にいくつか出演)、フィルム・ノワールにはピッタリの風貌と存在感の持ち主です。

一匹狼オルロフを演じるピエール・ジンメルの寡黙で落ち着いたキャラクターも実にメルヴィル的であり魅力的。
アントワーヌを演じるドニ・マニュエルが儲け役といってよく(「いぬ」のベルモンドを彷彿とさせる、“帽子”が印象的な最後!)、逆に、『マンハッタンの二人の男』で主役を演じたピエール・グラッセはここでは出番が少なめで、なんとも寂しい気がします。

それにしても、皆揃いも揃って不敵な面構えの連中ばかりで、ソフト帽が似合い過ぎです!
もう、彼らを観ているだけで、フィルム・ノワールを観ているという感触に浸ることができます。



紅一点マヌーシュ役のクリスチーヌ・ファブルガも実に素晴らしい。
あまり見かけない名前ですが、フランスの舞台女優とのこと。
最初の企画の段階ではこの役にはシモーヌ・シニョレが予定されていたと聞きますが、演技力はいざ知らず、風貌の女っぽさや色気はファブルガの方が数段上であり、彼女がマヌーシュ役でホントに良かったと思います。
それに加え、目の前の男の死にも全く泣き叫びもしない、肝の据わった落ち着き具合がいかにもそれらしい雰囲気と存在感を示しています。
映画前半でギュと再会する場面、そして、船中での別れの場面ともに二人の間には台詞は全くありませんが、二人の表情と眼はなんと雄弁にその心中を語っていることでしょう。

そして、ギュを演じる主演のリノ・ヴァンチュラの素晴らしさは言うまでもありません。
裏切り者という己の汚名を殺ぐために、死を賭しても行動するところなど、実にジョヴァンニ、メルヴィル的なキャラクターですが、それがヴァンチュラによって演じられることで、ギュの人間像がことさら魅力的に映るのです。

特に私が好きなシーンは、↑に述べたマヌーシュとの出会いと別れの場面はもちろん、再会したマヌーシュのためにささやかなパーティーを催す場面、プラチナ強盗を持ちかけられて、そのリーダーがポール・リッチだと知ってすぐに仕事を受諾する場面、“仕事”の後、アントワーヌを労う場面などで、それぞれなんともヴァンチュラらしいキャラが活かされたシーンで、好きですね。
ラストなど、トレンチコートに拳銃二丁構えた姿と、表情の男っぽさは、もう惚れ惚れするようなカッコ良さです。



しかも、そのヴァンチュラに匹敵するほど素晴らしいのが警視プロ役のポール・ムーリッス。
最初に登場する、映画冒頭の事件をもみ消すシーン(長回しによるワンカット!)からその存在感に惹き付けられますし、マヌーシュとの関係も微妙で、過去に何かあったのでは?と思わせる雰囲気もあります。
ラストの余韻も、ムーリッスの“折れ曲がった煙草”によって更に深いものとなっています。
また、警察の隠語とも思える名セリフがところどころに観られるのも面白く、この辺り、ジョヴァンニ臭さ満開といったところでしょうか。

私自身メルヴィル・ファンということもあって、贔屓目に見てしまうのかもしれませんが、これはメルヴィルのみならず、フィルム・ノワールの大傑作と言ってよいのではないでしょうか。
メルヴィル作品中でも、『いぬ』はもちろん、後の『サムライ』『仁義』らと並んで、最高傑作と言えるほどの充実した出来栄えだと思っています。
また、同じモノクロ作品である『いぬ』同様に、モノクロならではのフィルム・ノワールの世界に酔わされる作品でもあります。
いまだDVD化もされておらず、また、レンタルビデオで見かけることも少ないため、この作品の真価が(おそらくは)世間にあまり知られていないのは残念でなりません。

最後に、アントワーヌ役についてどうしても紹介しておきたいエピソードがあります。
当初メルヴィルが監督をする予定だった64年の段階では、アントワーヌ役にはピエール・クレマンティが予定されていたのですが、その後のラ・パテリエール監督の出演依頼に対してクレマンティは「いいえ!私はメルヴィル氏の映画に出るはずでしたので、あなたの映画に出たいとはこれぽっちも思いません!」と答えたといいます。
これを知ったメルヴィルは大変意気に感じ、いずれ恩返ししてやりたい、と述べていましたが、その早すぎる死によって、クレマンティと一緒に仕事をすることは結局叶わなかったのです・・・。

スタッフ キャスト レビュー あらすじ


あらすじ
11月20日 5時58分
早朝の暗闇の中、フランスのある刑務所から3人の男が脱獄する。
一人は途中で運悪く死んだが、他の二人は脱獄に成功し、森の中を逃げ去る。
近くを通った貨物列車の中へとなんとか飛び乗った二人。
その中の一人、ベルナールという男は、再び森の中へと去り、二人は無言で別れる。
列車に一人残ったの男はギュスターヴ・マンダ、通称“ギュ”。
10年前に凶悪犯として逮捕され、終身刑の宣告を受けて服役中だった男で、戦前に金塊輸送車を襲うなど、その筋では大物として名の通った男である。

マルセイユ 11月20日 23時
ナイトクラブの片隅で、クラブのオーナーであり、マルセイユの大物ギャングであるポール・リッチが、サングラス姿の男と密談している。
「“仕事”は12月28日の予定だ。成功すれば約束の金を払う。」
サングラス姿の男はどうやら情報提供者であるようだ。
オーナー室では、友人のジャノが「“公証人”ジャックにケリをつける」とパリへと向かう準備をしている。
ジャノとジャックの間では、ヤクの縄張り争いの件で一悶着あり、ジャノがいきり立っているのだ。
今度の“仕事”にはお前が必要だと、ポールはジャノを引きとめようとするが、ジャノは出て行く。

パリ 11月21日 夜
凱旋門近くの、とあるレストラン。
“公証人”ジャックが、オーナーのマヌーシュに言い寄っている時、ギュが脱獄したとのニュースが入る。
マヌーシュも、バーテンダー兼用心棒のアルバンも、ギュとは昔馴染みの仲である。
そんな時、ジャノの一味がレストランに押し入り、ジャックめがけて発砲する。
腕利きのアルバンが咄嗟に応戦し、相手にも致命傷を負わすが、ジャックは死ぬ。
すぐに警察が現場検証に現れ、パリ警察でも切れ者と噂のブロ警部が事件を担当する。
マヌーシュやアルバンとも旧知の仲であるブロは、関係者を言い含めながら適当にその場を繕うと、“凶悪犯ギュスターヴ・マンダ脱獄”という一報の載った新聞をアルバンに手渡してその場を立ち去る。



マルセイユ 11月22日
アルバンの銃弾を受けたジャノが昏睡状態であることを聞いたポール・リッチは、パリへと向かう。

パリ 11月23日 0時25分
マヌーシュとアルバンが車でマヌーシュの家へと着いた途端、隠れていた二人の男(アンリ・ツールヌールとルイ・バルテル)がアルバンに銃を向ける。
男たちは後ろからアルバンを殴って失神させると、マヌーシュの部屋に押し入って銃を向け、金を出せと脅す。
そこに密かにギュが現れ、マヌーシュの車の中から見つけた銃を二人の男に向ける。
ギュは、目を覚ましたアルバンと共に二人の男を殴りつけ、男たちの脅迫が、ポール・リッチの弟ジョー・リッチの手引きであることを白状させる。
二人の男を乗せたまま、ビル・ダブレの森まで車で出たギュとアルバンは、車中にて二人の男を始末し、車ごと乗り捨てる。

マヌーシュとアルバンは、モンルージュのアパートの一室にギュを匿うことにする。

ポール・リッチがパリに到着するが、その向かった先では、ジャノがちょうど亡くなったところだった。
ポールは、弟のジョー・リッチがパリに開いているバーを訪れ、ジャノとジャックが死んだことを知らせる。

マルセイユに戻ったポールは、今回の“仕事”仲間であるパスカル、アントワーヌと、ジャノの後釜を誰にするかの相談をするが、一匹狼のオルロフを仲間に加えようと提案し、オルロフを自分の家へ呼び入れる。
そこでポールは、500キロのプラチナ輸送車襲撃の話をオルロフに持ちかける。
現金にして10億フラン、彼ら4人の実行犯と、話を持ち込んだ男の5名で分けても一人2億になる大仕事である。
オルロフはその場で即答せず、「一週間待ってくれ」と返事を保留する。

11月24日
ビル・ダブレの森での殺人事件についてブロが動き始め、被害者二人は、ジョーの店の客だということが分かる。

マヌーシュはブロからパリを離れる許可をもらい、程なくしてギュが隠れているアパートを訪れる。
ギュは正装してマヌーシュを迎え、二人はささやかな晩餐を開く。

ブロはジョーの店を訪れ、兄のポールはヤクの競争相手を消そうとしていると言って、“公証人”ジャック殺害の影にポールの存在を嗅ぎ付けていることを匂わせつつ、ビル・ダブレの森での殺人事件はおそらくギュの仕業であり、殺されたやくざにジョーの影を察したギュが、そのうちジョーを消しに来るはずだと語る。



11月25日
アルバンがギュの隠れているアパートを訪れると、ギュはジョーを殺るつもりになっている。

ブロは、ギュの目論見を見越して、ジョーの周辺を刑事に見張らせる。
危険を察したジョーはコルシカへと飛ぶ。
ギュは、アルバンの車に乗り、ジョーの店の前まで行くが、直前でギュはジョー殺害を諦める。

11月26日
マルセイユに向かったマヌーシュは、従兄のテオを船に訪ね、ギュの隠れ家を見つけてくれるように頼む。
マヌーシュは、テオの船を使って、ギュをイタリアに密航させるつもりなのだ。

11月27日
マヌーシュの意図を訝ったギュは、10日後には自分から動くとアルバンに告げる。
アルバンは、ギュに自分のお気に入りの拳銃を渡す。

12月7日
髭を生やし、人相を変えたギュは、バスを乗り継いで、マルセイユへと向かう。

12月8日
旧知の仲であるテオの船を訪れたオルロフは、テオがギュを出国させようとしていることを聞くと、旅券は自分が用意するから一週間待てと言う。
オルロフは、以前からギュに一目置いているのだ。
そして、ギュが金に困っているなら、自分がポール・リッチから持ちかけられている今度の“仕事”をギュに廻すことをテオに提案する。

12月10日
ギュは、テオがマルセイユに用意してくれた隠れ家を訪れ、そこでマヌーシュと再会する。
文無しでは外国へ出られないと嘆くギュだが、そこへ来合わせたテオは、ポール・リッチの今度の“仕事”に手を貸せば、2億フランが手に入るとギュに伝える。
弟のジョーとは違い、信頼できる男であるポールの名を聞いたギュは、すぐさま手を貸すことを承諾する。



12月11日
ポール・リッチの家を再び訪ねたオルロフは、今回の件は断るが、自分の代わりにギュを推薦する。
ギュの名を聞いて、俄然乗り気となったポールとは裏腹に、獄中での評判からアントワーヌとパスカルは難色を示すが、オルロフはギュに関しては自分が保証すると説得する。

12月27日から28日の夜
マヌーシュは、ギュの今度の“仕事”とその後を心配している。
そして、自分がマルセイユに居たままでは、ギュとの関連を怪しまれる恐れがあることから、パリへと戻る。

同じ夜 23時58分
ナイトクラブにて、情報提供者はポールに、今回のプラチナ輸送の状況を説明する。
「明日の午後2時、輸送車がツーロンを出てカダラシュへ向かう。運転手の横に男が一人乗っている。ワゴンには箱の上に腰掛けた護衛が一人。」…

そして、12月28日…
約束通りポールの家に向かったギュは、今度の“仕事”仲間3人と対面する。
ポールがギュに“仕事”の順序を説明する。
「場所は人気のない荒地だ。アントワーヌが山の上からカービン銃で狙っている。そばに輸送車の3人を縛って放り込むのに恰好な小屋がある。10キロ離れた所に隠れ家がある。輸送車にオートバイ警官が前後に1人ずつ。アントワーヌが隠れる場所から1キロの所に、急に曲がる小さな近道があるから、俺たち3人はベンツで護衛が通り過ぎるのを待つ。長く尾行すると警戒されるからな。まず、アントワーヌが先の護衛をカービン銃で撃つ。そして、後ろの護衛は…」
ギュが口を開く。
「俺が車の中から撃つ。そして、輸送車の男達をふん縛って小屋に閉じ込める。」
ギュの言葉にポールは頷いた。
警官の増員を心配するギュだが、ポールは、情報提供者がこの輸送を指揮しているから心配ないという。



間もなく、4人は、決行現場である峠に到着すると、輸送車が到着するまでしばしの間、静寂が訪れる。
経験豊富な彼らでも、さすがに緊張は隠せない。
そんな時・・・。
はるか峠の向こうに輸送車の一群が見える。
輸送の形態は情報提供者の報告通りである。
そして、護衛のオートバイの後ろから不気味に迫る3人の乗ったベンツ。
輸送車が峠のカーブを曲がったところで、山の上からアントワーヌは、カービン銃で前方の護衛警官目掛けて数発撃つ。
オートバイ警官は崖下に転げ落ちる。
次の瞬間、後ろから迫ったベンツから覆面姿のギュが、後方の護衛のオートバイ警官に数発撃つ。
このオートバイ警官も崖下に転げ落ちる。
3人の乗ったベンツは、先回りして輸送車を止めると、銃を向けて運転手や護衛を輸送車から降ろし、近くの小屋の中に縛り付け、放り込む。
そして、輸送車からプラチナの金塊を自分たちの車へと運び出す。
仕上げに4人は輸送車を崖から落とすと、隠れ家であるポールの妻の実家へと向かい、駐車場の隅に金塊を隠す。
見事作戦通りに金塊を手にした4人はお互いの仕事ぶりに満足気だったが、ギュは、この件をタレこんだ情報提供者の存在に不安を感じていた。

現地の警察が動き出すが、事件を担当するファルディアノ警部は、以前から反りの合わないブロ警部の協力を拒絶する。

パリに戻ったブロは、今回の輸送車襲撃で使われた弾と、ビル・ダブレ事件で使われた弾が同じものかどうかを鑑識課に調べさせ、同じコルトのものだとの結果を得る。
ブロは、部下たちを集め、この二つの事件は同じ犯人によるものであり、15年前の殺人事件の手口からいっても、ギュによるものだとの考えをしめす。
ギュはプラチナを捌くため、1ヵ月半か2ヶ月は高飛びしないだろう、ならば…。
ブロには何か計算がありそうだ。

ギュはポールから分け前の金塊を受け取り、別れ際に、ジョーにはイヌの疑いがあると警告する。
隠れ家に金塊を隠したギュは、しばらく暇を潰すためにペタンクを見たりしながら外を出歩くようになるが、ある日、数人の男に囲まれ、車に押し込まれる。
見るからに、その連中はあるギャングの一団のようである。



ギャング連中に海沿いの場所に連れて行かれたギュ。
その中の男の話によれば、刑務所から一緒に脱獄したベルナールは、そこから見える絶壁の上で警察に囲まれ、飛び降りたのだという。
また、アンジェ・ネバダ、通称“天使”と呼ばれるギャングの大物が今回の“仕事”に対して怒っているのだという。
それというのも、その仕事はもともと“天使”がやるはずのものだったからだ。
旧知の仲である“天使”から裏切り者扱いされたことを聞いたギュは、脱獄したばかりの自分は、そんな事情は知らないと釈明する。
そして、リッチ兄弟のことを持ち出されると、ポールが、今度の“仕事”の一味であるかのような話をしてしまう。
そんな時、車の中から録音機を持った男と、ブロ警部が現れる。
ギャングに扮した連中は、実は皆刑事で、共犯者の名前を吐かせるため、ギャングの扮装をし、“天使”の名を出してギュを嵌めたのだ。
不法だ!と怒り心頭のギュだが、時既に遅し。
警察に連行されたギュは、ファルディアノ警部に引き渡される。



ギュの発言のテープが証拠となって、ポールも警察に逮捕され、ファルディアノに拷問される。
ギュはファルディアノによって、仲間の名前を漏らした密告者として新聞に載せられる。
激怒したギュは、自らガラス窓にぶつかるなど暴れ出し、大怪我して警察病院へと送られる。

ファルディアノが流した情報によって、ギュが裏切り者だと信じ込んだパスカルとアントワーヌは、マルセイユに来たジョーに対し、ポールにギュを紹介したオルロフと会って、おとし前をつけさせるように提案する。

再びマルセイユに来たマヌーシュは、テオの船でオルロフと会い、ギュを助けるよう頼む。
一方、自分の隠し部屋でジョー、アントワーヌ、パスカルの3人と会うことになったオルロフは、万が一に備えて、部屋の中に銃を隠し、一旦そこを去る。
しかし、早めにその部屋に現れたアントワーヌは、隠してあったオルロフの銃を見つける。

密会場所である隠れ部屋では、ジョー、アントワーヌ、パスカルの3人が先に来てオルロフを待っている。
ギュを消すよう要請する3人に対し、オルロフはギュは裏切り者ではないと言い、本当にギュがポールを売ったのなら、自分がギュを殺すと言う。
オルロフとアントワーヌには一触即発の雰囲気が漂い、隙を突いてオルロフがアントワーヌの拳銃を奪う。

大怪我をして警察病院に入院したギュは、隙を見て病院から脱走し、マルセイユの隠れ家に来ていたマヌーシュと再会する。
そして、ファルディアノの車に忍び込んだギュは、車の中でファルディアノに銃を向けると、手帳を渡し、マスコミ宛と法務大臣宛の手記を書かせる。
マスコミ宛には、ファルディアノが嘘をでっち上げて新聞に発表したこと、ブロがギュを逮捕する際に汚い手を使ったこと、ギュとポールが何も吐かなかった腹いせを書かせ、そして、法務大臣宛には、マスコミ宛と同じ内容の他に、容疑者に罪状を吐かせるために拷問したことを恥じるという内容を書かせる。
手記を書かせ終わると、ギュはファルディアノに手錠を嵌め、自分は運転席へと移る。
そして、車を走らせながら、いつもの手口で後部座席のファルディアノに銃口を向け、躊躇なく撃ち殺す。

テオの船でオルロフと再会するギュ。
自分が裏切っていない証拠であるファルディアノの手帳をオルロフに託そうとするが、その行き先(ジョーたちとの密会場所)をオルロフから聞き出すと、隙を見てオルロフを殴って失神させる。
ギュは、死を賭けて、自らその密会場所に乗り込むつもりなのだ。
ギュとマヌーシュは、無言の別れをする。

ジョーたちの密会場所に2丁の拳銃を持ったギュが突如現れる。
唖然とする連中を尻目に、ギュは、自分が裏切り者ではないことを主張し、ジョーこそ兄ポールの金塊と嫁まで横取りしようとした密告者であると言い放って、ジョーを撃ち殺す。
しかし、その隙を突いて、アントワーヌがギュの腰の辺りを撃つ。
ギュは負傷を負いながらも、パスカルとアントワーヌを撃ち殺す。
建物の周りには、銃声を聞いて駆けつけた野次馬と警察。
警察の指揮は、マルセイユに来ていたブロである。
ギュは刑事と撃ち合いになるが、刑事の弾が致命傷となり、「マヌーシュ…」とだけ言い残して死ぬ。
ブロは、倒れたギュの懐からファルディアノの手帳を見つける。
ブロは、現場に現れたマヌーシュに対し、「ギュは最後何も言わなかった」と嘘をつき、群がるマスコミの前にファルディアノの手帳をわざと落として立ち去るのだった。



スタッフ キャスト レビュー あらすじ