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CAST

メルヴィル作品に出演した主な俳優・女優ガイド。
少しずつ増やしてゆく予定です。

俳優名 出演作
A エメ・ド・マルシュ Aimé de March 『いぬ』
1924年フレスネ生まれ。50年代後半から映画に出始め、60年代後半からはフィリップ・マルシュ(Philippe March)を名乗った。メルヴィルが高く評価していた『墓場なき野郎ども』(60。クロード・ソーテ監督)に出演していたことなどから『いぬ』に起用されたと思われるが、実際、ギャング役としては勿体無いほどの美男である。他には『パリは燃えているか』(ノン・クレジット)などに出演しているが、個人的にはジョゼ・ジョヴァンニ監督の『最後のアドレス』が印象深い。1980年没。
アラン・ドロン Alain Delon 『サムライ』 『仁義』 『リスボン特急』
1935年パリ生まれ。60〜70年代のフランス映画を代表する稀代の二枚目スターだが、後期メルヴィル作品3作に立て続けに主演、他には見られない孤高のニヒリズムと深みを表現した。『サムライ』の殺し屋ジェフ・コステロ役におけるストイックな存在感、『仁義』のコーレイ役における口ひげを蓄えた男っぽさは特に印象深い。また、メルヴィル作品に限らず、この人ほど死にっぷりの演技が見事な人を私は他に知らない。現在も現役で活躍中。
アラン・リボル Alain Libolt 『影の軍隊』
1943年サン=ジャン=ド=モリエンヌ生まれ。『さすらいの青春』(68)で映画デビュー。『影の軍隊』では仲間を密告したために処刑される若者ポール・ドゥナを演じた。その処刑シーンは彼が美青年であるがゆえ、観る者により凄惨な印象を残したともいえよう。その後、いくつか映画出演した後に舞台に専念。90年代に映画の世界に復帰、近年もさまざまな映画に出演している。中でもエリック・ロメール監督の『恋の秋』(98)は印象的な役柄で、監督もその演技を絶賛したという。
ブールヴィル André Bourvil 『仁義』
1917年セーヌ生まれ。『パリ横断』『大進撃』などに出演していたフランスの大コメディアンで、2004年にはなんとフランスの偉人ベスト10に(ド・ゴール、ユーゴー、ピアフ等と並んで!)選ばれている。ちなみに『大進撃』は『タイタニック』が記録を破るまで、フランスの観客動員記録を誇っていた作品。メルヴィルとはずっと無縁だった彼だが、遺作となった『仁義』では、それまでにないシリアスな刑事役を演じ、素晴らしい成果を挙げた。シャンソンも歌っていた。『仁義』撮影後の1970年没。
アンドレ・プッス André Pousse 『リスボン特急』
1919年パリ生まれ。40年代は競輪の名選手として活躍、その後、ムーラン・ルージュの芸術監督も務め、あのエディット・ピアフと同棲していたことも。『リスボン特急』では絡みがなかったが、若い頃から競輪を通じてアラン・ドロンと親交があり、近作『刑事フランク・リーヴァ 』(03)でも共演。アクの強い風貌はノワールに合い、他の出演作に『パリ大捜査網』(68)、『シシリアン』(69)、『フリック・ストーリー』(75)など。2001年には自伝『Histoires sur le pouce』を発表している。2005年没。
アンドレ・サルグ(ガレ) André Salgues(Garet) 『賭博師ボブ』 『サムライ』
『ボブ』はガレ名義、『サムライ』はサルグ名義での出演。情報が少ないのが残念だが、『ボブ』のロジェ、そして『サムライ』の修理工役で絶対に忘れられない印象を残した。『サムライ』などセリフは一言だけだし、ナンバープレートを換えてドロンに拳銃を渡すだけの役だが、一つ一つの動き、物腰があまりに素敵(あの拳銃の渡し方!)。『赤い灯をつけるな』にも顔を出している。『サムライ』撮影前から重病だったが、その辺の経緯は是非ルイ・ノゲイラ著「サムライ」で。67年没。
C カトリーヌ・ドヌーヴ Catherine Deneuve 『リスボン特急』
1943年パリ生まれ。言わずと知れたフランスの大女優。『リスボン特急』撮影時は現在のキアラ・マストロヤンニを妊娠中であったが、世界最高の美女というに相応しい美貌を誇っていた時期でもあり、アラン・ドロンとの共演はまさに美男美女の共演であった。それだけに、演じたカティという役柄がどっちつかずのどこか魅力に欠ける役柄だったことが残念だが(妊娠中であまり動けなかったらしい)、ミステリアスな存在感はさすが。もちろん、現在も現役。
カトリーヌ・ジュールダン Catherine Jourdan 『サムライ』
1948年アゼー・ル・リドー生まれ。『ふたりだけの夜明け』(67。監督:マルセル・カミュ)にて映画デビュー。同年、『サムライ』にてナイトクラブのクローク係を演じた。『あの胸にもういちど』(68)では、アラン・ドロンと再び共演している。70年代は人気女優となり、近年国内DVD化された『別れの朝』(71)を始め、国内未公開の主演作がいくつかあるようだ。『聖女アフロディーテ』(82)なるソフト・ポルノ作品にも出ているようだが、90年代以降は映画に出ていない模様。
カティ・ロジェ Cathy Rosier 『サムライ』
1945年仏領西インド諸島グアドループ生まれ。『サムライ』にて、アラン・ドロン演じる殺し屋を庇う謎のクラブ・ピアニスト、ヴァレリーを演じる黒人女優。モデルやアナウンサーを経て、『サムライ』が映画初出演となった。不思議な色気があり、また陰のある存在感がメルヴィルに気に入られたのだろう。特にラストで、ドロンに銃口を突きつけられた時の表情がいい。『ラムの大通り』など、70年代も女優として活躍、歌も歌っていた。2004年没。
シャルル・ヴァネル Charles Vanel 『フェルショー家の長男』
1892年レンヌ生まれ。サイレント期から活躍、戦前には『外人部隊』や『我等の仲間』などの名作に出演し、戦後も『恐怖の報酬』でカンヌ映画祭男優賞を受賞するなど、フランス映画を代表する名優の一人。実際、人間の持つ弱さを演じて、この人の右に出る俳優はほとんどいなかったのではないか。メルヴィル作品への出演は『フェルショー家の長男』のみで、例によってメルヴィルとの関係は上手くいかなかったようだが、その演技は名優の名に恥じない見事なものだ。1989年没。
クリスチャン・バルビエ Christian Barbier 『影の軍隊』
1924年サン・オーエン生まれ。『ラッキー・ジョー』(64、ミシェル・ドヴィル監督)、『ダンケルク』(64、アンリ・ヴェルヌイユ監督)あたりから映画俳優としてのキャリアを始める。『影の軍隊』では立派な体格が生き、“ビゾン”(野牛)役にピッタリの存在感を示した。特にリノ・ヴァンチュラと対立するシーンは迫力充分。それ以降では、『燃えつきた納屋』(73)、『プレステージ』(77)、『ポーカーフェイス』(80)でアラン・ドロンと共演しているのが目を引く。近年も主にテレビで活躍中。
クリスティーヌ・ファブレガ Christine Fabrega 『ギャング』
1931年パリ生まれ。舞台女優出身で、テレビ出演が多い一方、映画出演は非常に少ない。他に有名どころではジョゼ・ジョヴァンニ監督の『暗黒街のふたり』に出演。舞台で鍛えた演技力があり、メルヴィル作品にピッタリの色気と女らしさを兼ね備えた女優である。事実、『ギャング』のマヌーシュ役はいかにも暗黒街の女性らしい雰囲気があり、主演のリノ・ヴァンチュラとの相性も良く、素晴らしい出来。アラン・ドロンもこの映画の彼女を褒め称えている。1988年没。
クロード・セルヴァル Claude Cerval 『賭博師ボブ』
1921年パリ生まれ。個性的な風貌と存在感で、50〜60年代のフランス映画を支えた貴重なバイプレーヤー。『賭博師ボブ』で演じた、強欲な妻に尻を叩かれるカジノの胴元役は名演だったが、メルヴィル作品への出演がそれだけだったのは、そのどこか憎めない風貌が作風に合わなかったためか。主な出演作に『墓場なき野郎ども』(60)、『地下室のメロディー』(63)、『皆殺しのバラード』(66)などのノワール系作品、『いとこ同志』(59)、『昼顔』(67)、『銀河』(69)など。1975年没。
クロード・マン Claude Mann 『影の軍隊』
1940年アントニー生まれ。出演した『影の軍隊』では登場場面が少ないこともあってか存在感は今一つだが、あのキャスト陣の中に収まる俳優はおいそれとはいないはずで、その意味では適役だったと言えるのではないか。ジャック・ドゥミ監督『天使の入江』(63)ではジャンヌ・モローと共演、他にコスタ=ガヴラス監督『七人目に賭ける男』(65)、マルグリッド・デュラス監督『インディア・ソング』(74)、ルキノ・ヴィスコンティ監督『イノセント』(76)あたりが主な出演作と言えそうだ。
D ドニ・マニュエル Denis Manuel 『ギャング』
1934年パリ生まれ。他にルイス・ブニュエル監督の『銀河』、イヴ・ボワッセ監督の『影の暗殺者』、ヴァレリアン・ボロヴツィク監督の『夜明けのマルジュ』等に出演。テレビで主に活躍していたためか、キャリアの割には映画出演が少なく、私も他にはジャック・ドレー監督の『フリック・ストーリー』ぐらいでしか顔を見た覚えがない。しかし、メルヴィルも褒めているように、『ギャング』のアントワーヌ役は好演で、特に映画後半でのオルロフとの緊張感溢れるやり取りは見応え充分だ。93年没。
E エドゥアール・デルミット Edouard Dermit 『恐るべき子供たち』
1925年イタリア生まれ。47年コクトーと出会い、『双頭の鷲』にて俳優デビュー。もともとは画家志望だったという。『恐るべき子供たち』の監督をメルヴィルに依頼したコクトーは、同時に、ポール役にデルミットを起用するという条件を付けたが、後にメルヴィルは、彼はポール役には精悍過ぎ、ミスキャストだったと語っている。コクトー監督作品『オルフェ』、『オルフェの遺言』にも出演。後にコクトーの養子となり、莫大な遺産を手にし、悠々自適な晩年を送ったという。1995年没。
エマニュエル・リヴァ Emmanuelle Riva 『モラン神父』
1927年生まれ。舞台女優を経てアラン・レネ監督の『二十四時間の情事』等に出演。メルヴィルは『二十四時間の情事』を観て彼女を大変気に入り、『モラン神父』に起用したという。期待に違わぬ存在感と演技を示したのはご存知の通り。フランス女優には珍しい(?)清楚な美しさがあり、個人的にも好きな女優である。キェシロフスキ監督の『トリコロール/青の愛』(93)にはなんと痴呆老人役で出演。『愛、アムール』(12年)でアカデミー史上最年長ノミネート女優となったのには驚かされた。
F ファビエンヌ・ダリ Fabienne Dali 『いぬ』
1941年バハマ出身。『いぬ』ではエキゾチック風メイクを施し、いかにもギャングの情婦らしい雰囲気を醸し出していた。主演作『快楽の砂』(64。マックス・ペカス監督)もあるが、『うたかたの恋』(68。監督:テレンス・ヤング)、『女性上位時代』(69。監督:パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ)等にも出演。他にも、試写会を観たヴィスコンティが大絶賛したと言うホラー作品『呪いの館』(66。監督:マリオ・バーヴァ)への出演も注目されよう。70年代以降は映画に出演していない模様。
フランソワ・ペリエ François Périer 『サムライ』 『仁義』
1919年パリ生まれ。『北ホテル』、『居酒屋』、『カビリアの夜』など名監督の多くの作品に出演した名優。メルヴィル作品でも『サムライ』の警視役、『仁義』のナイトクラブオーナー、サンティ役で、実にメルヴィル作品の登場人物らしい一癖も二癖もある存在感を示した。とりわけ、『サムライ』でナタリー・ドロンを偽証罪になるぞと脅すシーン(ワンカット!)は名演である。メルヴィル曰く「一番意外なことは、ペリエがスターの一人であるべきなのにスターでないことさ」。2002年没。
G ジャン・マリア・ヴォロンテ Gian Maria Volonté 『仁義』
1933年生まれ。『夕陽のガンマン』、『ミラノの銀行強盗』、『死刑台のメロディ』など多くのイタリア映画に出演、舞台俳優としても活躍中に『仁義』に出演した。ヴォージェル役で示した、その粗野な存在感が印象的だったが、私生活でもそうだったらしく、メルヴィルは彼の演出に大変手を焼いたという。政治思想的にも極左として有名だった。83年には『LA MORT DE MARIO RICCI』でカンヌ映画祭男優賞受賞。ちなみに、ミレーユ・ダルクの元彼だったという話もある。94年没。
ギー・ドコンブル Guy Decomble 『賭博師ボブ』
1910年生まれ。『賭博師ボブ』で警視役を演じる。「『ボブ』での彼は最高だと思う。実にいい俳優だったね」とはメルヴィルの言。実際、なんとも味のある風貌と存在感は他には求めがたいものがあり、やくざボブと友人の警視役という皮肉な役柄も妙にリアリティがあった。他の映画ではトリュフォーの名作『大人は判ってくれない』での教師役がなんといっても有名。シャブロルの「いとこ同志」にも顔を出している。64年に54歳で没と、まだ若くして亡くなったのが惜しまれる。
H ハワード・ヴェルノン Howard Vernon 瑞西 『海の沈黙』 『賭博師ボブ』 『モラン神父』
1914年、スイス生まれ。ハワード・ヴァーノンと記述されることも多い。『海の沈黙』でドイツ人将校役を演じ強烈な印象を残す。また、『賭博師ボブ』のマッキミー役は、『海の沈黙』と同じ人とは思えないほど雰囲気が違う。『影の軍隊』でも独語台詞でメルヴィルに協力している。特異な風貌を生かして、数多くの怪奇映画に出演。エロス映画の巨匠・ジェス・フランコ監督作品の常連でもあり、意外なところではゴダールの『アルファヴィル』にも出演している。96年没。
I イザベル・コーレイ Isabelle Corey 『賭博師ボブ』
IMDbには1929年5月メス生まれとあるが、1939年生まれというのが正しいようだ。メルヴィルがマドレーヌ広場でスカウト、契約したという、メルヴィル・プロの“専属女優”である。『賭博師ボブ』撮影時は若干15〜16歳であり、さすがに演技力は未熟ながらも瑞々しい存在感を発揮。その後、メルヴィルの元を離れてロジェ・ヴァディム監督の『素直な悪女』(56年)に出演、それからは『女と男』(57)、『狂った情事』(61)、『ヴァニナ・ヴァニニ』(61)などのイタリア映画に出演した。
J ジャック・ルロワ Jacques Leroy 『サムライ』 『仁義』 『リスボン特急』
IMDb等海外のサイトを調べても詳しい情報が見つからないのが残念だが、金髪が印象的な、後期メルヴィル作品の密かな常連である。なんといっても『サムライ』の殺し屋が印象的で、陸橋の上やジェフ宅でジェフを襲うシーンは共に名場面。『仁義』ではサンティの息子を自白させようとしてマテイ警視と対立する刑事、『リスボン特急』ではボルドー駅でヤクを渡すギャングの一味を演じている。他にはジョゼ・ジョヴァンニ監督の『最後のアドレス』に出演しているようだ。
ジャン・ドサイ Jean Desailly 『いぬ』 『リスボン特急』
1920年パリ生まれ。40年代からさまざまな映画に出演、日本ではフランソワ・トリュフォー監督の『柔らかい肌』で有名。どこか育ちの良さを感じさせるおっとりした存在感が『いぬ』のクラン警視役に不思議なくらいピタリとはまっていた。特にクランのオフィスのシーンは、10分近くがワンカットで撮られ、メルヴィルの全作品中でも印象的な名シーンの一つ。『リスボン特急』はワンシーンのみ出演している。夫人は『リスボン特急』に出演しているシモーヌ・ヴァレール。2008年没。
ジャン=マリ・ロバン Jean-Marie Robain 『海の沈黙』 『恐るべき子供たち』 『この手紙を読むときは』 『賭博師ボブ』 『影の軍隊』
1913年ビヤール生まれ。初期作品に軒並出演しているように、メルヴィルとの結びつきは強く、元々戦友の間柄だった。戦後、近所に住んでいた縁で『海の沈黙』に出演することになるが、難役の伯父役を30代前半で見事に演じ切ったことに今更ながら驚かざるを得ない。『影の軍隊』での男爵役も印象的。他にはアンリ・ドコワン監督『L'Affaire des poisons』(55)、ジャック・リヴェット監督『パリはわれらのもの』(60)等に出演、60年代以降は主にテレビで活躍していた。2004年没。
ジャン・ネグロニ Jean Négroni 『ギャング』
1920年、仏領アルジェリアはコンスタンティヌの生まれ。若くしてアルベール・カミュと劇団を設立するなど劇界で活躍。フランスにおける最も美声の持ち主の一人と言われ、朗読でも活躍した。朗読を担当した映画ではクリス・マルケル監督『ラ・ジュテ』(62)あたりが有名。『ギャング』では、ギャングに化けた刑事という複雑な役柄を、ジョージ・ラフトばりの化粧を施し不思議な存在感で演じていた。フィリップ・ラブロ監督の『危険を買う男』(76)でも重要な役柄を演じている模様。2005年没。
ジャン=ポール・ベルモンド Jean-Paul Belmondo 『モラン神父』 『いぬ』 『フェルショー家の長男』
1933年パリ生まれ。ヌーヴェル・ヴァーグのみならず、フランスを代表する名優。メルヴィルとは『勝手にしやがれ』以来の因縁があり、60年代前半の3作に立て続けに主演。日本では『いぬ』しか知られていないのが残念だが、特に『モラン神父』では見事な演技を披露。もちろん、『いぬ』のシリアン役も彼のニヒルな魅力を伝えてくれる名演だ。『仁義』ではアラン・ドロンとの共演の話もあったというが、『ボルサリーノ』のいざこざが元で流れてしまったのがまことに残念。
ジャン=ピエール・カッセル Jean-Pierre Cassel 『影の軍隊』
1932年パリ生まれ。舞台を経て映画俳優に。ハリウッド映画にも多数出演。息子は俳優のヴァンサン・カッセルで、『クリムゾン・リバー』などで親子競演も果たしている。『影の軍隊』のジャン=フランソワ役は、意志の強さと爽やかさが彼にピッタリの役であり、一癖も二癖もあるキャストの中でも、“影の”主役といってよいような存在感を示した。ただし、撮影ではメルヴィルにいろいろと痛い目にあったらしい。近年出版された著書もある。2007年没。
ジャン=ピエール・ポジェ Jean-Pierre Posier 『サムライ』 『仁義』 『リスボン特急』
海外サイトを見ても、やはり情報の少ない人だが、“ドロン三部作”にいずれもチョイ役ながら顔を出していることから、メルヴィル・ファンの認知度は高いと思われる。中では『サムライ』のオリヴィエ・レイ役が大役と言えるが、『仁義』ではマテイ警視の補佐の刑事役、『リスボン特急』では駅で運び屋に麻薬を渡すギャング役(眼鏡姿)を演じている。他にはルイ・マル監督の『地下鉄のザジ』や、先ごろ亡くなったジェラール・ウーリー監督の『大進撃』(66)『大頭脳』(69)にも出ているようだ。
ジュリエット・グレコ Juliette Gréco 『この手紙を読むときは』
1927年モンペリエ生まれ。今なお現役の大物シャンソン歌手で、他の映画出演作に『オルフェ』『恋多き女』等がある。母がレジスタンス活動家だったため、大戦中、独軍の刑務所に入れられたことも。戦後、コクトー、サルトル、ボリス・ヴィアン等と交友、メルヴィルも当時よく通ったというサンジェルマン・デ・プレのミューズだった。『この手紙を読むときは』で共演したフィリップ・ルメールと結婚、離婚。ミシェル・ピコリとも再婚、離婚歴がある。マイルス・デイヴィスとのロマンスも有名だ。
L リノ・ヴァンチュラ Lino Ventura 『ギャング』 『影の軍隊』
1919年イタリア生まれ。『現金に手を出すな』でデビュー。ジャン・ギャバン以後のフランス映画では、男性的な役柄をやらせて右に出る者のない名優であり、同時に、メルヴィルらしい暗黒街の匂いを濃厚に感じさせる俳優でもある。メルヴィルは『影の軍隊』のジェルビエ役をヴァンチュラに演じてもらうための説得に9年かかったという。メルヴィルとは反りが合わず、撮影中は反目し合う仲だったとのことだが、完成した主演作2作はそれを感じさせない見事な出来栄えである。1987年没。
M マルセル・ボズフィ Marcel Bozzuffi 『ギャング』 『サムライ』
1929年パリ生まれ。『Z』、『フレンチ・コネクション』等に出演、60〜70年代に国際的な活躍をした。アクの強い悪役のイメージがあるが、ジョゼ・ジョヴァンニ監督の『ル・ジタン』では警視役を重厚に好演していたりするから油断ならない。『ギャング』ではリッチ兄弟の弟ジョー・リッチを演じたが、レイモン・ペルグランとの兄弟役というのは、今考えても豪華な配役だ。確証はないが、『サムライ』(ナイトクラブのトイレでジェフが白手袋を着ける場面)にも出演しているとの情報も。1988年没。
マルセル・キュヴリエ Marcel Cuvelier 『いぬ』
1924年フランスGlageon生まれ。『いぬ』においてはジャン・ドサイの部下の刑事役を演じていた。舞台演出家としても著名で、ニコラ・バタイユと共にパリ・ユシェット座でウジェーヌ・イオネスコの『授業』(初演1951年)などを演出。歌手のバルバラとも親交があり、作品も提供していたという。主な出演作に『死刑台のエレベーター』(58)、『日曜には埋葬しない』(60)、『戦争は終わった』(66)、『さすらいの青春』(67)、『告白』(70)、『相続人』(73)、『薔薇のスタビスキー』(74)などがある。
マイケル・コンラッド Michael Conrad 『リスボン特急』
1925年ニューヨーク生まれ。『リスボン特急』への彼の起用は、いかにもアメリカ好きのメルヴィルらしい選択だ。ギャング役としての存在感もあり、映画後半でのドロンとの腹の探りあいは見応え充分。50年代から本国で数多くのTVシリーズで活躍、代表作は『ヒル・ストリート・ブルース』の刑事役で、81年、82年と2度プライムタイム・エミー賞助演男優賞受賞。映画ではロバート・アルドリッチ監督『ロンゲスト・ヤード』(74)での元プロ・フットボーラーの囚人役が有名である。1983年没。
ミシェル・ボワロン Michel Boisrond 『サムライ』
1921年フランス、ウール=エ=ロワール生まれ。ルネ・クレール門下であり、ブリジット・バルドーを起用した一連の作品の監督として有名だが、メルヴィルに依頼され『サムライ』にナタリー・ドロン演じるジャーヌの愛人ヴィエネル氏役として出演。その後、監督した『個人教授』にナタリーを主演に起用してスターダムに押し上げた。ちなみに、アラン・ドロンのデビュー当時の出演作『お嬢さん、お手やわらかに!』、『学生たちの道』の監督もこの人。2002年没。
ミシェル・コンスタンタン Michel Constantin 『ギャング』
1924年ブーローニュ生まれ。ジャック・ベッケル監督の『穴』が実質的俳優デビュー。ユニークな風貌と存在感から、フランスのフィルム・ノワールになくてはならない存在となる。事実、強面の風貌に似合わぬ?人間味を感じさせるいい俳優である。『穴』以来の因縁からか、特にジョゼ・ジョヴァンニ監督作品に数多く出演。結果的にメルヴィル作品への出演が『ギャング』だけだったのはジョヴァンニ色が強すぎたせいか。2003年没。
ミシェル・ピコリ Michel Piccoli 『いぬ』
1925年パリ生まれ。50年代から数多くの映画に出演し、近年もマノエル・デ・オリヴェイラ監督の『夜顔』で老練の演技を披露するなど、精力的に活躍中の名優。メルヴィル作品で出演したのは『いぬ』のみで、しかもヌテッチオという「ちょい役」(メルヴィル談)だが、にもかかわらず、その存在感は実に印象深いものがあった。メルヴィルも「ピコリはシナリオを読みもしなければ、ギャラがいくらかも知らずに出演した。だが、『いぬ』での彼の演技は傑出している」と絶賛している。
ミシェール・メルシエ Michèle Mercier 『フェルショー家の長男』
1939年ニース生まれ。日本では無名に近い存在だが、自国フランスでは主演作も多く、中でも『アンジェリク』5部作(64〜68。ベルナール・ボルドリー監督)は大人気シリーズだった。『フェルショー家の長男』のルー役も美しく魅力的である。他にも、アナトール・リトヴァク監督『さよならをもう一度』(61)、オムニバス『愛すべき女・女たち』(66)等にも出演しているが、『ピアニストを撃て』(60)での彼女のヌードシーンは、トリュフォーがメルヴィルを悦ばせるために撮ったカットなのだという。
モニーク・エヌシー Monique Hennessy 『マンハッタンの二人の男』 『モラン神父』 『いぬ』
メルヴィル作品に3作も出ている女優は珍しい。それもそのはず、彼女はもともとメルヴィルの秘書だったという。実際のところ、出ているのはチョイ役ばかりだが、どこかマリリン・モンローを彷彿とさせる色気のあるスタイルと存在感が、特に男性の眼に留まるようだ。中では、やはり『いぬ』のテレーズ役が魅力的であり、また、一番の大役である。ちなみに、『モラン神父』では別人のようにふっくらしている。『マンハッタンの二人の男』でのメルヴィルとのキスシーンも必見である。
N ナタリー・ドロン Nathalie Delon 『サムライ』 『影の軍隊』
1941年、モロッコ、カサブランカ生まれ。64年、アラン・ドロンと結婚。67年の『サムライ』が女優デビューとなり、夫アラン・ドロンの愛人役を演じる。出演に際し、夫には大反対されたらしい。メルヴィル曰く「二人は兄妹のように似ている」。それがキッカケとなったのか、69年、二人は離婚。二人の間の息子アントニーは俳優として活動中。彼女自身は『個人教授』等で女優として人気を博し、後に監督業にも進出した。ノンクレジットながら『影の軍隊』にもワンシーン出演している。
ニコル・ステファーヌ Nicole Stéphane 『海の沈黙』 『恐るべき子供たち』
1923年パリ生まれ。ユダヤ人大富豪として知られるロスチャイルド家の一員で、戦後、演技を学んでいるところをメルヴィルに見出され、『海の沈黙』(47)でデビュー。映画初出演とは思えぬ好演ぶりを示す。続く、『恐るべき子供たち』(50)でもエリザベート役を鮮烈に演じた。後に交通事故によって女優を断念し、映画監督、映画のプロデューサーとなり、マルセル・プルーストの長編小説「失われた時を求めて」の映画化に情熱を注いだ。2007年没。
P パトリシア・ゴッジ Patricia Gozzi 『モラン神父』
1950年北イタリア生まれ。彼女を一躍有名にしたのはセルジュ・ブールギニョン監督『シベールの日曜日』(62年アカデミー賞外国映画賞受賞、アンリ・ドカ撮影)のシベール役だが、ゴッジ3姉妹(彼女は次女で、姉がシャンタル、妹がマリエル。4姉妹との説も)が出演した『モラン神父』も、彼女の出演作としてもっと注目されてもよいのではないだろうか。他にはジョン・ギラーミン監督『かもめの城』(65)等に出演しているが、60年代末に結婚後は映画界を引退した。
ポール・アミオ Paul Amiot 『仁義』
1886年パリ生まれ。『仁義』では「人は皆罪人なり」との名言(迷言?)を吐く監査局長役を演じたが、1910年から1973年までの間に100本近い映画に出演、刑事、弁護士、医者等の役柄を一貫して演じた。有名作ではないが、主演作も数多い。著名な出演作に、アベル・ガンス監督『ナポレオン』(27)、ピエール・ビヨン監督『ルイ・ブラス』(47)、フィリップ・ラブロ監督『相続人』(73)、グラニエ=ドフェール監督『離愁』(73)など。死後、臓器が医学機関に寄贈されたという。79年没。
ポール・クローシェ Paul Crauchet 『影の軍隊』 『仁義』 『リスボン特急』
1920年南仏のエロー県生まれ。決して二枚目ではないし、役もあまり目立たないものの、その髪の毛の薄さも手伝って(?)、後期メルヴィル作品には欠くことのできない顔である。役としては『影の軍隊』のフェリックスが最も大役だが、『仁義』の故買屋役、『リスボン特急』の刑事役も出番の少なさにかかわらず不思議と印象に残る。60年代から70年代にかけてアラン・ドロンと共演することが多く、ロベール・アンリコ監督の『冒険者たち』でもドロン、ヴァンチュラと共演している。
ポール・フランクール Paul Frankeur 『ギャング』
1905年パリ生まれ。苦虫を噛み潰したような個性的な面構えで主に刑事役に定評があり、『ギャング』のファルディアノ警部役でも彼ならではの存在感を発揮。他にはジャック・タチの長篇第1作『のんき大将』に出演、『ヘッドライト』(55)あたりからジャン・ギャバンとの共演が多くなり、多くのフィルム・ノワール作品や『冬の猿』で共演、また、ルイス・ブニュエル監督の『銀河』に主演、『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』、『自由の幻想』にも出演している。1974年没。
ポール・ムーリッス Paul Meurisse 『ギャング』 『影の軍隊』
1912年ダンケルクの生まれ。40年代からさまざまな映画に出演。出演したメルヴィル作品2作での存在感はまさに強烈で、卓越した演技力と、人間的な懐の深さを感じさせる名優である。『ギャング』のブロ警部役で、事件をもみ消すシーンの長科白は名演だし、ラストの余韻の深さも彼の功績が大きい。また、『影の軍隊』でも、周囲から“聖人”と仰がれる学者でありながらも実はレジスタンスのボスという難役リュック・ジャルディを見事な存在感で演じている。1979年没。
フィリップ・ルメール Philippe Lemaire 『この手紙を読むときは』
1927年ムシー・ルヌフ生まれ。主に悪役に定評があり、『この手紙を読むときは』では不誠実なチンピラ風情のホテルマン、マックス役を好演。そこで共演したジュリエット・グレコと結婚し、後に離婚。他の出演作に『オードリー・ヘプバーンのモンテカルロへ行こう』(51)、『世にも怪奇な物語』(68年、第1話)、『ジェーン・バーキン in スキャンダル』(76)など。近年では『マルセイユ・ヴァイス』(03)や『ルパン』(04)等にも出演していたが、2004年にパリの地下鉄に投身自殺した。
ピエール・コレ Pierre Collet 『仁義』
1914年モントルージュ生まれ。『仁義』では出所間近のアラン・ドロンに宝石強盗のヤマを持ちかける看守役を演じた。40年代から活躍したフランス映画の貴重な脇役の一人で、出演作にも、『殺られる』(59)、『地下室のメロディー』(63)、『小間使の日記』(64)、『太陽の下の10万ドル』(64)、『ダンケルク』(64)、『パリは燃えているか』(66)、『雨の訪問者』(70)、『ラ・スクムーン』(73)、『暗黒街のふたり』(73)、『離愁』(73)など錚々たる名作の数々が並ぶ。77年没。
ピエール・グラッセ Pierre Grasset 『マンハッタンの二人の男』 『ギャング』
1921年生まれ。『男の争い』で映画デビュー。メルヴィルとは一緒に映画を観に行くほど仲が良かったという。『マンハッタンの二人の男』でデルマスを演じ、映画を観たベルモンドをビビらせるほどの好演をしたが、その後のキャリアが鳴かず飛ばずだったのがなんとも惜しい。『ギャング』のパスカル役はアクの強い周囲に押されてか、存在感が薄いのが残念だ。後にフィリップ・ラブロ監督の『相続人』にもデルマス役として出演、他に監督・脚本・出演作『都会が目覚めるとき』(75)もある。
ピエール・ヴォディエ Pierre Vaudier 『いぬ』 『ギャング』 『サムライ』 『影の軍隊』 『仁義』 『リスボン特急』
一般的な情報は全くと言ってよいほどないものの、端役ばかりとはいえ、6作に出演とメルヴィル作品の最多出演記録を持つ俳優。『いぬ』ではヌテッチオの店の客、『ギャング』ではポール・リッチとジョー・リッチの店の客、『サムライ』ではジェフの部屋に盗聴器を仕掛ける刑事、『影の軍隊』では骨董店店主、『仁義』では宝石店の責任者(店長?)、『リスボン特急』では銀行員を演じている。一番目立つ役は『サムライ』の刑事役であろう。『パリは燃えているか』(66)にも出演している。
ピエール・ジンメル Pierre Zimmer 『ギャング』
1927年パリ生まれ。50〜60年代にかけて、映画監督、助監督として活躍、驚いたことにあの『太陽がいっぱい』の助監督も務めている。俳優としては『ギャング』がデビュー作だったようで、その後は、クロード・ルルーシュ監督作品にいくつか出演、クロード・ピノトー監督の『死にゆく者への調べ』(72)においてリノ・ヴァンチュラと再び共演している。『ギャング』での一匹狼オルロフ役はふてぶてしいほどにニヒルな雰囲気が役柄によく合っていて魅力的だった。
R レイモン・ペルグラン Raymond Pellegrin 『ギャング』
1925年ニース生まれ。40年代から多くの映画に出演、近年もテレビで活躍していた。ナポレオン俳優として有名で、豪華なキャスティングで有名なサッシャ・ギトリ監督の『ナポレオン』(54年)でタイトル・ロールを演じている。メルヴィルはそれ以前から彼をナポレオン俳優として買っており、彼を起用して『アンギャン公爵の死』を撮りたかったのだという。とはいえ、ギャング役者が彼の本領であることもまた確かで、他にも多くの映画でギャング役を演じている。2007年没。
ルネ・ルフェーヴル René Lefevre 『いぬ』
1898年ニース生まれ。サイレント期から活躍のベテラン俳優だが(当時)、このような渋く、雰囲気のある俳優をちょい役に起用しているところに『いぬ』のキャスティングの充実ぶりが窺えよう。主な出演作に、ルネ・クレール監督『ル・ミリオン』(31)、ジャン・ルノワール監督『ランジュ氏の犯罪』(35)、ベルナール・ボルドリー監督『情報は俺が貰った』(58)など。脚色、台詞を担当した作品にジュリアン・デュヴィヴィエ監督『巴里の空の下セーヌは流れる』(51)他がある。1991年没。
リカルド・クッチョーラ Riccardo Cucciolla 『リスボン特急』
1924年イタリア、バリ生まれ。50年代から伊映画で活躍、『盗みのプロ部隊』(67)等に出演していた。ジャン・マリア・ヴォロンテと共演したジュリアーノ・モンタルド監督の『死刑台のメロディ』(71)でカンヌ映画祭最優秀主演男優賞を受賞。『リスボン特急』ではギャング一味に加わるリストラ銀行員という、どこか人間的弱さを感じさせる役柄を、見事な演技力で演じた。『ボルサリーノ2』(74)ではアラン・ドロンと再び共演、フィリップ・ラブロ監督『潮騒』(74)にも出演している。1999年没。
リチャード・クレンナ Richard Crenna 『リスボン特急』
1926年アメリカ、ロスの出身。メルヴィル作品に彼のような米国人俳優が、しかも主演クラスで起用されるのは極めて珍しいが、その理由はメルヴィルが高く評価していたテレンス・ヤング監督の『暗くなるまで待って』(67)に出演していたことが大きかったに違いない。出演作となった『リスボン特急』のシモン役は、主演のアラン・ドロンの刑事役よりもむしろ儲け役だったと言えよう。本国の出演作では『砲艦サンパブロ』(66)、そして『ランボー』シリーズが有名。2003年没。
ロベール・ファヴァール Robert Favart 『サムライ』 『仁義』
1911年エジプトのアレクサンドリア出身。『サムライ』のバーテンダー役は一癖も二癖もある存在感が印象的。『仁義』ではモンタンが宝石店を下見する際に接客する店員を演じていた。著名な出演作としては、『将軍たちの夜』(66。アナトール・リトヴァク)、『最後のアドレス』(70。ジョゼ・ジョヴァンニ)、『帰らざる夜明け』(71。ピエール・グラニエ・ドフェール)、『ドン・ファン』(73。ロジェ・ヴァディム)、『ジャッカルの日』(73。フレッド・ジンネマン)が挙げられよう。2003年没。
ロジェ・デュシェーヌ Roger Duchesne 『賭博師ボブ』
1906年生まれ。戦前に『とらんぷ譚』『格子なき牢獄』など多くの映画に出演、すでにスターの座を射止めていた。44年、パリ解放の暁にはゲシュタポに協力した咎により逮捕されている。その後本物のやくざに転じて借金のためパリを追われていたところを、メルヴィルが“暗黒街”に出向いて『賭博師ボブ』出演の許可を取り付けたという。それゆえか、なかなか普通の俳優には身に付かないそれらしい(?)雰囲気の持ち主である。後に車販売に転じたという。1996年没。
ロジェ・フラデ Roger Fradet 『ギャング』 『サムライ』 『仁義』 『リスボン特急』
端役専門の俳優のためか、映画出演も決して多くなく、情報がほとんどない。だが、引締まった緊張感のある面構えが印象的で、実にメルヴィル作品の登場人物らしい雰囲気のある俳優だ。メルヴィルも気に入っていたのか、4作品で彼を起用している。『ギャング』ではギュと共に脱獄するベルナール役、『サムライ』、『仁義』では共に刑事役、『リスボン特急』では銀行強盗犯マルクを撃つ銀行員役を演じている。ジャン・ドラノワ監督『太陽のならず者』(67)にも出演している。
S セルジュ・レジアニ Serge Reggiani 『いぬ』 『影の軍隊』
1922年イタリア生まれ。シャンソン歌手としても有名。40年代から多くの映画に出演しており、メルヴィル自身、『いぬ』の監督はレジアニの出演が条件であったと語っているほど。しかし、主役のシリアンをやりたがり、メルヴィル曰く「オファーされてない役を常にやりたがるのがレジアニの悪い癖だ」とも・・・。なんと『ギャング』のギュを演じる話もあった。『影の軍隊』の床屋役(友情出演)も出番は短いものの印象的である。2004年没。
シモーヌ・シニョレ Simone Signoret 『影の軍隊』
1921年ドイツ生まれ。『肉体の冠』『嘆きのテレーズ』『悪魔のような女』など、フランス映画の多くの名監督の作品に主演。『年上の女』でアカデミー主演女優賞を受けるほどの国際的な演技派女優。メルヴィル作品の出演は『影の軍隊』のみだが、見事なまでの女傑っぷりを発揮、作品に多大の貢献をした。『ギャング』でマヌーシュを演じる話もあったが、事情があって流れた。長らく連れ添った夫はイヴ・モンタン。1985年没。
シモーヌ・ヴァレール Simone Valère 『リスボン特急』
1923年8月2日パリ生まれ。あえて誕生日を記したのは、この人の誕生日がメルヴィルの命日であるため。上品な美しさの持ち主で、『リスボン特急』でのリカルド・クッチョーラとの夫婦役は、メルヴィル作品には珍しい夫婦役ということもあり印象的だった。主に舞台で活躍したため、映画出演は決して多くなく、『情婦マノン』、『夜の騎士道』、『凶悪犯』、『暗殺者のメロディ』あたりが作品的には有名か。夫ジャン・ドサイとの共著『Un Destin pour deux』は1997年にサン=シモン賞を受賞。
ステファニア・サンドレッリ Stefania Sandrelli 『フェルショー家の長男』
1946年イタリア生まれ。『フェルショー家の長男』撮影時はまだ若干16歳で、ちょい役ながらベルモンドとラヴシーンを演じるヒッチハイカー役だった。ピエトロ・ジェルミ監督に育てられ、後にイタリアを代表する演技派女優に成長。大物になってからもポルノ作品に数多く出演しているのはお国柄とはいえ偉い。個人的には、ベルナルド・ベルトルッチ監督『暗殺の森』(70)でのドミニク・サンダとの映画史に残るダンスシーンがやはり忘れがたい。近年もテレビを中心に活躍中。
V ヴァレリー・ウィルソン Valérie Wilson 『リスボン特急』
ベルギーのブリュッセル出身。『リスボン特急』において、警察に情報提供するオカマ?の情報屋を演じ、鮮烈?な印象を残す。この人はてっきりオカマ、つまり本来は男性だと思われがちだが、調べてみると、驚いたことに実は正真正銘の女性であるようだ。そうなると、あのギャビーという役がもともと女性の役なのか、オカマの役なのか分からなくなるが・・・。『リスボン特急』以外にも女優活動はしていたようで、フランシス・ルロワ監督の『La Michetonneuse』などに出演している模様。
Y イヴ・モンタン Yves Montand 『仁義』
1921年イタリア生まれ。もともと優れたシャンソン歌手で「枯葉」の名唱は有名。また、共産主義者であったことも有名である。『恐怖の報酬』、『告白』など俳優としての魅力も言うまでもない。メルヴィル作品への出演は『仁義』のみだが、元警官のスナイパー役を演じ、他を食わんばかりの強烈な印象を残す。メルヴィルもモンタンの作品への取り組み方を絶賛している。シモーヌ・シニョレと長らく連れ添ったが、マリリン・モンローとの浮き名が流れたこともある。1991年没。