スタッフ |
製作: |
スペクタクル・ランブロンゾ(パリ) Spectacles Lumbroso (Paris) |
同: |
ウルトラ=フィルム(ローマ) Ultra Film (Rome) |
製作代表: |
フェルナン・ランブロンゾ Fernand Lumbroso |
製作主任: |
ジェローム・シュッテル Jerôme Sutter |
同: |
ジャン・ダルヴェイ Jean Darvey |
原作: |
ジョルジュ・シムノン(Georges Simenon)の小説による(1945年、ガリマール刊) |
脚本・脚色・台詞・監督: |
ジャン=ピエール・メルヴィル Jean-Pierre Melville |
助監督: |
イヴ・ボワッセ Yves Boisset |
同: |
ジョルジュ・ベルグラン Georges Pellegrin |
同(見習い): |
アラン・ボノ Alain Bonnot |
撮影監督: |
アンリ・ドカ Henri Decae |
カメラ・オペレーター: |
アラン・ドゥアリヌー Alain Douarinou |
セカンド・カメラマン: |
ミカエル・シュレイエ Michael Shrayer |
撮影助手: |
フランソワ・ローリャック François Lauliac |
同: |
アラン・ドローブ Alain Derobe |
進行・渉外: |
シャルル・オヴェルニュ Charles Auvergne |
装飾: |
ジョルジュ・フォントネル Georges Fontenelle |
同: |
ルイ・スーレ Louis Seuret |
装飾助手: |
ドナルド・カードヴェル Donald Cardwell |
同: |
ジャン=ジャック・ファブル Jean-Jacques Fabre |
装置: |
ルイ・シャポー Louis Charpeau |
音楽: |
ジョルジュ・ドルリュー Georges Delerue |
ハーモニカ: |
アルベール・レスネル Albert Raisner |
スチール写真: |
レイモン・ヴォワンケル Raymond Voinquel |
録音技師: |
ジャン=クロード・マルシェッティ Jean-Claude Marchetti |
同: |
ジュリアン・クテリエ Julien Coutelier |
録音助手: |
ヴィクトール・リネリ Victor Rinelli |
同: |
ジャン・ゴードレ Jean Gaudelet |
ジェネラル・マネージャー: |
パウル・ペスティエ Paule Pastier |
製作秘書: |
アントワネット・ドラール Antoinette Delarue |
美術: |
ダニエル・ゲレ Daniel Guéret |
編集: |
モニーク・ボノ Monique Bonnot |
同: |
クロード・デュラン Claude Durand |
編集助手: |
アニー・バロネ Annie Baronnet |
同: |
ニコール・タローニ Nicole Taroni |
記録: |
エリザベート・ラプノー Elisabeth Rappeneau |
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キャスト |
ミシェル・モーデ Michel Maudet: |
ジャン=ポール・ベルモンド Jean-Paul Belmondo |
デュードネ・フェルショー Dieudonné Ferchaux: |
シャルル・ヴァネル Charles Vanel |
ルー Lou: |
ミシェール・メルシエ Michèle Mercier |
女性ヒッチハイカー・アンジー Angie l'autostopeuse: |
ステファニア・サンドレッリ Stefania Sandrelli |
リナ Lina: |
マルヴィナ Malvina |
ルーの女友達 l'amie de Lou: |
バルバラ・ソメール Barbara Sommers |
ジェフ Jeff: |
トッド・マルタン Todd Martin |
ススカ Suska: |
E=F・メダール E.F.Medard |
看護士: |
ジンジャー・ホール Ginger Hall |
銀行家 le banquier: |
ジェリー・メンゴ Jerry Mengo (特別出演) |
アンドレイ氏 M.Andreï: |
アンドレクス Andrex |
エミール・フェルショー Émile Ferchaux: |
アンドレ・セルト André Certes |
娼婦 la prostituée: |
デリア・カン Delia Kent |
モーデの対戦相手のボクサー: |
モリス・オゼル Maurice Auzel、 |
リングアナウンサー: |
ドミニク・ザルディ Dominique Zardi |
重役: |
ユーグ・ヴァネル Hugues Wanner |
同: |
ポール・ソレズ Paul Sorreze |
同: |
シャルル・ベヤール Charles Bayard |
同: |
ピエール・ルプルー Pierre Leproux |
同: |
ゼレル Zeller |
その他の出演: |
シモーヌ・ダロ Simone Darot、エディー・ソマーズ Eddie Somers |
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コダック・イーストマン・カラー、ワイド・スクリーン(フランスコープ) |
102分。 |
1962年8月から11月まで、フランス、北米にてロケ撮影、及びジェンネル撮影所にてセット撮影。 |
パリ公開 = 1963年10月2日 |
日本公開 = 2009年11月29日 |
国内DVD、VHSビデオレンタルなし。海外盤DVDあり。DVD情報はこちら |
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なお、スタッフやキャスト等のデータに関しましては、主に「サムライ」(ルイ・ノゲイラ著、井上真希訳、晶文社刊)、「キネマ旬報 1973 616」(シネ・ブラボー ジャン=ピエール・メルヴィル追悼(1)山田宏一)、「Jean-Pierre
Melville/An American in Paris」(Ginette
Vincendeau著)の3冊を参考とさせていただいております。 また、スタッフの役職名等、映画本編のエンドクレジットとは多少表記が異なると思われる部分もございます。 |
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レビュー |
国内未公開作品であり、国内盤ソフトも存在しませんのでレンタル等でも観られません。
海外でも長らくソフトの存在しない作品でしたが、昨年(2007年)、RENE CHATEAU VIDEOからフランス盤DVD(字幕なし)が発売になりました。
私もそのお蔭で、この“幻の作品”をようやく一通り観終えることができましたが、DVDに字幕がなく、ほとんど言葉が分かりませんでしたので、当然のことながら、作品を十分に理解できているとは言えません。
よって、ここでは、ルイ・ノゲイラ著「サムライ」に記されている内容を中心に、作品の周辺の事柄を主に書き記しておきます。(基本的にネタバレはありません)
この作品は、ジョルジュ・シムノン原作の小説の映画化であり、メルヴィル初のカラー作品。
この小説は、1945年に本国で出版されていますが、日本でも1970年に翻訳、出版され、その時のタイトルは『フェルショー家の兄』(伊藤晃訳)でした。
「長男」とか「兄」とか表現こそ違えど、意味は同じで、デュードネ・フェルショーには一緒に事業を起こしたエミールという弟がおり、このタイトルは、その兄であるデュードネのことを表しているわけです。(映画ではシャルル・ヴァネルの役)
誤解しそうですが、ジャン=ポール・ベルモンド演じるミシェル・モーデのことを示しているのではありません。
ところで、この小説、最近ようやく読了しましたが、実に面白い小説であり、一方で映画と原作がいかにストーリーが違うかがよく分かりました。
ネットで入手が可能ですので、この作品に興味のある方には是非一読をオススメします。
メルヴィルは、映画のタイトルを『尊敬すべき若者(Un jeune homme honorable)』にしたかったものの、契約上の問題で実現できなかったとのことです。(映画を一通り観た印象から言いますと、『誇り高き若者』とでもいった方が、より映画のイメージに近いかもしれません)
それにしても、『フェルショー家の長男』というタイトルは、映画のタイトルとしては色気が無さ過ぎではないでしょうか。
このタイトルでは、よほどのメルヴィル・ファン、ベルモンド・ファンでないと、観たいという気にならないのではないかと思います。
明らかにタイトルで損をしている映画ですが、ストーリーを簡単に言うならば、一代で富を築いた企業家と、その秘書兼ボディガードとなった若い男の逃避行物語です。
なぜ逃避行なのか?といいますと、老企業家が若い頃、アフリカの植民地で事業を起こした際に現地人を3人殺したことが後になって問題となり、それから逃れる必要があるからです。
映画の舞台はほとんどがアメリカであり、メルヴィル作品には珍しい、ある種のロード・ムーヴィー的趣きのある作品です。
季節も夏であり、そのため、当然のことながら、メルヴィルの他の暗黒映画とは雰囲気がかなり異なりますが、これはこれで不思議な味わいのある、魅力的な作品だと思います。
撮影監督は、盟友アンリ・ドカ。
また、これは『モラン神父』、『いぬ』から続いた“ベルモンド3部作”の最後に当たる作品ですが、ここでベルモンドが演じたミシェル・モーデ役は、3部作中でも、この時期のベルモンドの若さを記録した、もっとも彼らしい魅力的な役柄といえるのではないかと思います。
もともと、原作の映画化権を持っていたフェルナン・ランブロンゾの製作では、ミシェル・モーデ役にはアラン・ドロンが予定されていました。
ところが、監督が決まるまでに、契約切れとなってしまい、その企画は結局実現しませんでした。
次にミシェル・モーデ役にリストアップされたベルモンドが、メルヴィルと再び仕事をしたがっていたことが契機となって、この作品が作られることになったのです。
映画は、ベルモンドのボクシングの試合シーンから始まります。
メルヴィル自身、ボクシングが好きで、若いときにやっていたスポーツとのことで、ベルモンドのボクシング・シーンを、誰よりも先に撮りたかったとのことです。(ちなみに、『この手紙を読むときは』にもボクシングの試合シーンがあります)
物語の舞台は、すぐにフランスからアメリカへと移ります。
当然のことながら、メルヴィルとドカはアメリカでロケ撮影を行いましたが、実際にアメリカで撮影したのは“アメリカ的風景”と言えるシーンのみで、実際は、アメリカのシーンもほとんどがフランスでのロケ、セット撮影だったとのことです。
その“アメリカ的風景”にベルモンド、ヴァネルが写っている必要はなかったとのことで、アメリカ・ロケに、この二人は参加していません。
アメリカ・ロケの最中にメルヴィルが苦労して見つけたという、フランク・シナトラの生家が一瞬映し出されるシーンが映画途中にあります。
ベルモンドの他に、もう一人の主役と言えるのが、デュードネ・フェルショー役を演じたシャルル・ヴァネル。
言うまでもなく、フランス映画の名優ですが、ヴァネルとメルヴィルの関係は、例によって、あまり上手くいかなかったとのこと。
もともとメルヴィルは、フェルショー役にスペンサー・トレイシーを望み、トレイシー本人も同意していたものの、重病のため実現しませんでした。
私もスペンサー・トレイシーでこの役を観たかったという思いが正直ありますが、映画を観る限り、ヴァネルは実に役柄の雰囲気があり、また原作を読んでも、かなりそのイメージに近いという気がします。
存在感として若干地味な感じは否めないものの、演技はさすがに素晴らしい。
ちなみに、メルヴィルによれば、デュードネ・フェルショーという役には、あのハワード・ヒューズのイメージを想定していたとのことです。(実際にハワード・ヒューズも5年にわたる失踪生活を送っています)
他に、逃避行の途中、彼らが知り合うヒッチハイカー役として、デビュー間もないステファニア・サンドレッリが出演。
また、これは作曲家ジョルジュ・ドルリューがメルヴィル作品に起用された唯一の作品ですが、独特の流麗なメロディが印象的で、素晴らしい効果を上げています。
仏ユニバーサル・ミュージックから出ている輸入盤CD『Le Polar selon Georges Delerue』には、この映画のサントラ2曲(「Les
Appalaches」「Maudet et Ferchaux」)が収録されています。
なお、映画を観て初めて分かったことですが、ルイ・ノゲイラ著『サムライ』(189ページ)に“『いぬ』の乱闘シーン”として紹介されている写真は、実際は『いぬ』のシーンではなく、『フェルショー家の長男』のワンシーンです。
それもそのはずで、私もこの写真を見る度に、『いぬ』にこんなシーンあったっけ?とずっと思っていました。
ところで、2001年に、フランスのテレビでこの作品がリメイクされ、なんと、今度はベルモンドが(ポール・)フェルショー役を演じました。
若者役は『TAXI』のサミー・ナセリですが、リメイク版の監督を『仁義』の助監督だったベルナール・ストラが務めている点にも不思議な因縁を感じます。
このテレビ版、フランスではDVDも出ていますので、興味のある方は是非。 |
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